したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が900を超えています。1000を超えると投稿できなくなるよ。

【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

795Evie ◆XksB4AwhxU:2015/07/07(火) 20:20:10
「あ、あれ?手が動く……ていうか、俺気絶してない……なんで!?」
混乱する鍛冶の隣で、木村がぱち、と目を開ける。まだ状況が掴めていないのか、不思議そうな表情であたりを見回す木村の頭を、
松本が軽く小突いて覚醒させた。
「起きたか、二代目」
「えっと……もしかして、松本キックさん?」
「つもる話は後や、手ェ出せ」
言われるまま差し出された木村の手に、松本が自分の手をぴたっと合わせ指を組む。指のすきまからぱあっと放射光が放たれ、
あたりが一瞬昼間みたいに明るくなった。松本が指を解くと、二人の指の関節の間を透明な糸が繋いでいる。糸の先は立ち上がった鍛冶の体に伸ばされ、
木村が指を曲げると、鍛冶の腕も上がった。
「こいつら蹴散らして逃げるなら、こんくらいで十分やろ」
「……どういう意味、ですか?」
まだ理解していないらしい木村に、松本が簡潔に説明する。
「“キャブラー大戦時代に覚醒していた石に限り、以前の持ち主の肉体を媒介として能力の一時的な借用や、
 エネルギーの受け渡しによる対価の軽量化、能力の倍増等が可能となる”以上、太田光さんからの受け売りでした」
棒読みな口調で一気に話すと、まだぽかんとしている木村を無理矢理引っぱって立たせる。
「いたっ、いだだっ!あの、俺もうクタクタなんですけど……」
「おい松本、お前がやってやってもいいんじゃねえのか?」
見かねた上田が一歩前に出るが、きっと睨みつけられ、口をつぐむ。

「お前がやらなあかんのや、木村。今の石が選んどるのはお前なんやからな。それに……」

松本が言い淀んだ先は、上田には何となく理解できた。今の松本は舞台俳優であり、芸人としては一線を退いた身だ。
今までも元キャブラーが能力を一時的に借りた例はあったが、それは彼らがまだ芸人であったがゆえに可能だった事かもしれない。
たとえ元芸人であっても、単体で能力を行使した場合、どんなペナルティが下るかは未知数。
「まさか、お前らしくねえよ」
怖いのか?と言いかけて、またやめた。その代わりに、木村の思うがままに任せることにする。
「……カッコよく言うなら、石とその運命から逃げるな、って事でしょ?分かってますよ。ただ、どうやって?」
ふ、と笑って松本がもう一度木村の手をとる。社交ダンスを踊るように指を組み、向かい合わせに立って前を向いた。
「深く息を吸って、吐け。自分の体と石が呼応しとるのが分かるか?」
「はい……なんとなく」
「その感覚を辿って、鍛冶と自分の体を一体化させろ。お前が鍛冶で、鍛冶がお前や。
 人間の脳についとるリミッターを外して、身体能力を最大限に引き出す。その手助けをしたると考えればええ。
 ……えーと、確かこうやったっけな?」
松本は人差し指をくいっと曲げさせて、腕を上げる。鍛冶の体が四つん這いになったかと思うと、手足の血管がビキ、と浮き出た。
「あ、やっぱワンちゃんと操作同じなんや」
鍛冶の体が弾かれたように飛び上がり、一回転して天井に両足をつく。
「お?……おっ、お、おわああ!!今度は何ぃぃぃ!?」
突然の出来事に頭がついていかず、悲鳴をあげる鍛冶。上げた腕を一気に下ろすと、
勢い良く石膏ボードを蹴った踵が、角材を持った男の脳天にクリーンヒットした。モップを取り落として肩で息をしていた有田が後ろへ下がると、
それを合図に松本も手を離して「後は頑張れ」と木村の背中を叩く。
「お゛うっ!?」
視界がぐるぐる回る気持ち悪さに、思わず喉からくぐもった声が上がる。まるで19世紀に倫敦を震撼させたバネ足ジャックの如く
空中で丸まった相方を、木村がじっと澄み切った目で見つめていた。
特徴的な大きい瞳をすっと細めて、敵の数をひい、ふう、みいと数える。
開きっぱなしの給湯室のドアが目に入ると、何か思いついたのか、両手を前でクロスさせた。
「全部で15人……か。行けるな」
「え?」
低いつぶやきに、嫌な予感がする。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板