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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

791Evie ◆XksB4AwhxU:2015/06/19(金) 21:41:15
【2004年】

「おー、めっちゃひさしぶりやん!」
「あ、嵯峨根さん……おひさしぶりです」
「いっつもテレビで見とるで、まさかお前らがボキャ天の出世頭になるとはなあ」
一番会いたくない人間と、テレビ局の廊下で鉢合わせた。目をそらして「はあ……まあ」とあいまいな返事をする上田に、X-GUNの二人は顔を見合わせる。
西尾がそっと手を伸ばした。思わず目をぎゅっとつむって体をこわばらせたが、額にぺたっと冷たい感触。おそるおそる目を開くと、
手のひらを当てて、熱を測っているだけだった。
「熱はないみたいやけどな、俺葛根湯持っとるから、あとで分けたろか?」
「え?あ、はい……ぜひ……」
やっぱり。上田は心のなかでつぶやく。この態度が演技なら主演男優賞モノだ。二人は、少し前までの自分達と同じく、石に関する記憶を失ったまま__。
X-GUNの中で、自分達は芸人仲間であり、敵ではない……。
「うっ」
「あ、大丈夫か!?やっぱりお前、胃に来る風邪ひいとんのとちゃう?」
口元を抑えてしゃがみこんだ上田の背中を、嵯峨根が優しく撫でる。その手を振り払って、廊下を走って逃げる。
「おい!」
後ろから追いかけてくる嵯峨根の声に滲んでいたのは、怒りではなく、上田を案ずる心。走りながら、誰のものとも知れない声が頭の中で反響する。
やめろ。
やめてくれ。
そんな優しい顔で見るな、気遣うな、はっ倒されたほうがましだ!あんたたちにはその権利があるはずだ!!
なのに、何故……何故、覚えていてくれないんだ、俺達の罪を、黒だった過去を!
「くそっ!」
逃げた先で壁を思い切り殴ると、胸の奥につかえていた不快感が薄らいでいく。ポケットから石を取り出して見ると、
かつてどす黒い感情のエネルギーを呑みこんでいた時とは違う、やわらかな光を湛えていて。
「……嘘でもいいから」
石を握りこんで、祈りを捧げるように両手の指を組む。
「お前が憎いと、言ってくれ……」

【現在】

ふっ、と意識が過去から引き戻される。喉に食い込んだ男の指に、さらに力がこもった。ポケットの中の方解石が、熱を持って脈打っている。
「……ぐっ、は……な、」
男の腕に震える指をかける。引き剥がそうともがく後ろで、勢い良くドアが開いた。
「上田!?」
その声に、目線だけを必死で動かす。が、有田の姿をその目にとらえた途端、上田も男も(ついでに鍛治も)一瞬あっけにとられた。
ピコハンを右手に、左手にモップを持った彼は、さくらんぼブービーの二人が倒れているのを見ると、みるみるうちに怒りをにじませた。
「お前ら……ただで済むと思うなよ」
どすの利いた低音で紡がれたヒーローさながらのかっこいい台詞は、その見た目のせいでいまいち決まらず。
「……あれ?なんだこの空気」
有田は頬をかくと、気まずそうに息をついた。


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