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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

787Evie ◆XksB4AwhxU:2015/06/19(金) 21:33:59
「一つ、聞いていいか」
「どうぞ」
「お前の後ろに、まだ誰かいんのか」
「いや、俺の意志です。誰に命令されたわけでもありません。まあ、白の芸人と一緒に作戦をたてたりはしましたが、仲間とも呼べない関係です」
「その計画……って」
「今日のうちに、実行に移します。早い方が横槍も入らなくて済みますから。明日には全部終わってる……ってのが理想ですけどね」
対馬は、イレギュラーがなければですけど、と付け加えると、そっと両手で包み込むように、虹色に輝く結晶を握りしめた。
「知ってます?願い事っていうのは……星の数ほど願って、針の先ほど叶うっていうの。俺一人の力がどこまで通じるかは分からない。
 だけど、土田がいつか、少しでも俺の想いに気づくことがあれば。それだけで俺は報われると思います」
「そんなの、分かんねえだろ」
上田の言葉で、対馬の笑顔がわずかに翳った。それを誤魔化すかのように柵に手をかけて、体を大きく反らして背筋を伸ばす。
そのまま、仕返しとばかりに聞いてくる。
「で、海砂利さんこそどうしてここにいるんですか。俺の石なんてゴミ箱にでも捨てて、知らん顔してればよかったでしょうに」
「……そうだな、俺達はずっと、勝ち目のない賭けはしなかったし、自分の得にならない事はしなかった。
 生きていく上での、不穏分子を排除して、常に最善の道を、選んできたつもりだった」
上田は柵に上半身を預けて、タバコを一本取り出す。ふうっと煙を吐いて、遠くのネオンに目をやった。
「今なら分かる。俺達は……合理的に生きていたんじゃない。まるで死人のように、思考を放棄して。
 必死で、自分たちの進んできた道を正当化する方法を探してきた」
まだ半分残ったタバコをもみ消すと、指を組んでじっと目を伏せる。
「なあ、対馬」
「はい」
「俺達は、一体どうすればいい?どこに行けばいい、どこに立てばいい?……どうしたら、この胸の痛みは消えるんだ?」
最後はほとんど泣きそうな声になっていたが、対馬は笑わずその肩に手を置く。
「目を閉じて……石を手にしてから、あなた達が一番楽しかった時のことを、思い出してみてください」
対馬はくるりと背中を向け、靴音を響かせ歩いて行く。
「待て!……あ、いや……待って、くれ」
つい、黒ユニットの癖で命令形になってしまった。慌てて丁寧に言い直した有田を、対馬は半分だけ振り向いて、なんとも言えない表情で見つめた。
自分の心臓部分を、親指でとんとんとノックする。

「そうすれば、自分の本心が見えますよ」

石を持ってから、今までで一番楽しかった時。思い出そうとする二人の耳に、肉が焼ける音と酔客の喧騒が押しよせてくる。
目を開けると、二人はいつの間にか夜の焼肉屋にいた。
「ここ……俺達がいつも行ってたあの店か?」
有田のつぶやきには答えず座敷に目をやると、鉄板の上で焼かれている肉と野菜、空っぽになったビール瓶が見える。
これは、すでに過ぎ去った日の風景なのか。目の前で繰り広げられている光景には、どこか現実味がない。
『ぷはーっ、やっぱこれやなあ!生きとるって感じするわあ』
赤ら顔でビールジョッキを一気に空けた嵯峨根を、過去の海砂利はぽかんと口を開けてみている。
つまみの枝豆も、あたりめも、あっという間に空になった。嵯峨根はジト目で後輩たちを見回すと、またビールを注いだ。
『……なーに辛気臭い顔しとんねん。お前らも飲め飲め!!』
『わ、ぶほっ!やめっ……』
無理矢理ビールを飲まされてむせる有田に、西尾が『ごめんな』と手を合わせる。


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