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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

785Evie ◆XksB4AwhxU:2015/06/06(土) 17:07:12
三人は同時に地面を蹴った。
空間がカッターで切り裂いたように開く。有田が銃口を向けるより早く、土田の体は赤いゲートに飲みこまれた。
「有田、右だ!」
上田が叫ぶと同時に、跳ぶ……というより地面に転がって避ける。
仰向けに倒れた有田の目の前に、小ぶりのナイフを持った土田が飛び出してきた。
間一髪で避けた拍子に、松本がバックステップで距離をとっているのを見てしまう。
「松本、お前一人だけ後ろとかずりいぞ!……っとと、あっぶねえ!」
ナイフの刃先を蹴って、弾き飛ばす。舞台用の革靴でよかったと柄にもない感謝をした。
機関銃を構えてぱらららっと撃つ。一瞬、肉がえぐれたりやしないかと肝を冷やしたが、
弾も無害なBB弾に変わっているらしく、土田の動きをわずか止めるに留まった。
「ガウッ!」
無防備になった土田の右手に、飛びこんできた加賀谷が思い切り噛みつく。
土田は一瞬ひるんだが、すぐに左の袖口に隠し持っていたナイフを取り出して振るった。
「させるか!」
地面に片膝をついた松本が、右の指を一気に折り曲げ腕を振るう。
加賀谷は土田の上を軽々と飛び越えて、今度は背中に飛びかかる。
のしかかってきたものの正体を考える暇もなく、土田の体は地面に倒れこんだ。
土田の口からかすかに空気が漏れたが、決定打には至らなかったのか、有田の足を掴んで引きずり倒すと、
首に手をかける。ひゅ、と空気が喉から漏れた。
「十秒だけ待ってあげます。レインボークォーツを、渡してください」
引き剥がそうと暴れるが、全体重をこめてのしかかられ、息もできない。
ぎり、と指に力がこもった瞬間、

「離れろぉっ!!」

土田の体が、横からのタックルで文字通り吹っ飛んだ。
地面にへたりこんで、こちらに片腕を伸ばしている。その指から一本、また一本と糸が離れ落ちていく。
松本の額には血管が浮き出て、鼻血がだらだらと顎をつたい落ちている。脳の負荷が限界値に達したのか、目の焦点も合っていなかった。
「……無理、すんなよ」
やっとの思いで出たのは、そんな的外れな言葉だった。土田はもう跳ぶだけのパワーも残っていないのか、地面に転がったまま動かない。
「……今のうちに、はよ行け……レインボーブリッジの、遊歩道に……あいつは、おる」
「え?」
「そっから動いとらんから……今行けば…たぶん……黒の奴等よりは早く……」
「お前らを置いてけるわけねえだろ!」
「ええから、はよ行け!」
本気で怒鳴られ、有田もそろそろと立ち上がる。
「……後じゃ恥ずかしいから、今のうちに言っとく」
ごめん、それと、ありがとう。
海砂利の二人は何度も振り返りながら、走り去った。
彼らの他には誰もいなくなった海浜公園で、最初に口を開いたのは土田だった。
「……もう何もしませんから、どうぞ石を解除してください」
土田も、指輪を外してベンチに倒れこむように座る。見ると顔色も悪い。五分五分と思っていたが、彼もずいぶんと消耗していたようだ。
「……対馬は変なところで頑固だ。俺が力ずくで止めたところで、無駄なんでしょうね。
 そこんとこ、松本さんはどう……」
思います?と聞きかけて、土田は口をつぐんだ。
力尽きた松本は地面に仰向けに倒れて、灰色の空をぼんやりと見つめている。
『最後に、その力……海砂利のために使ってくれんか。
 あの二人の背中を押す手助けを、したってほしい』
電話越し、震えていた西尾の声。白黒どちらにも染まらず、自分たちの居場所をふらふらと探し続けた果てがこれなら、
思っていたより悪くない。また鼻血が垂れて、口の中に鉄の味が広がる。
「(まあ……あと一つ贅沢言うんやったら……)」
瞼が重くなって、意識が遠ざかっていく。松本は体の力を抜いて、抗えない眠気に身を任せた。
「(お前らと肩を並べて、闘いたかったな)」


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