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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

783Evie ◆XksB4AwhxU:2015/06/06(土) 15:46:11
「“あなたにそんな権利があるとでも?”」

弾丸が放たれるのと同時に、土田の唇が言葉を紡いだ。言霊は見えない矢となって、有田の胸を貫く。
軌道はわずかに逸れて、土田の頬をかすめるに留まった。上田は恐る恐る手を外し、立ち上がる。

「“あなた方は、その石で何人を傷つけたか覚えていますか?
  その手からこぼれ落ちたものは、もう二度と還っては来ませんよ”」
低く、地を這うような声。再び、見えない矢が有田の心臓を突き抜ける。
有田は漫画であればビクリ、と擬音がつきそうなほど、大げさに動揺した。
額からは次から次へと汗がこぼれ落ち、心臓はうるさいくらいに脈打っている。
引き金にかかった人差し指は、糸でからめとられたように動かない。
「お、おい有田……何やってんだよ、さっさと攻撃しねえと……」
「分かってる!……でも、動けねえんだよ!」
手はカタカタと震えて、照準が合わない。
土田の真っ赤なマフラーがパサ、と地面に落ちる。まるで血が滴り落ちるような錯覚。
有田は目を見開いたまま、ゆっくりと歩みよってくる土田を凝視するしかない。
 「“たとえば、そうですね……X-GUNの二人はどうでしょう?一生消えない傷を刻みつけた相手を、
  反省したからといって、笑顔で許してくれるでしょうか?恩を仇で返した爆笑問題は?
  生放送中に襲われた成子坂は?まだまだ沢山いますよね……あなた方が傷めつけた人は”」
土田は、ぞっとするような笑みを口元に浮かべて言霊を放つ。そのたびに言葉は鎖のように、有田をじわじわと締めつけていく。
いつの間にか、土田の顔がすぐ目の前に迫っていた。

「“あなた達は、許されない。どれだけ償おうが、絶対に”」

ぐるりと目の前の景色が暗転する。
自分は、いつの間にか暗い水の中に沈んでいた。上も下も分からない。有田の意志に反して、体はどんどん沈んでいく。
ばたつかせた足を、誰かが掴んだ。頭から血を流した嵯峨根が、憎しみのこもった上目遣いで睨みつけている。
『……嫌だ、やめろ!』
もがく体に無数の手が絡みつき、引きずりこもうとする。その手の持ち主は皆、自分たちが傷つけた芸人たちで。
口々に二人を罵りながら、有田の体に爪を立てる。
『離せ!』
コポ、と口から水泡が浮かんでは消えていく。もがけばもがくほど、手の力は強くなっていく。
苦しい。息ができない。冷たい。怖い。嫌だ。頭の中を支配する暗い感情。
『有田!』
混沌の中で、誰かの声がした。唯一自由なままの右手を、精一杯伸ばす。
『こっちだ、有田!』
その手を、次々に誰かが掴んだ。温かい、知っている手だった。その手が、有田をぐいっと引き上げる。
体に絡みついていた手が、一人、また一人と離れていった。体が急浮上する感覚に、ぎゅっと閉じていた目を開く。
仄暗い水の底から、光が指す方へ向かって、有田の体はぐんぐん引っ張られていった。


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