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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

779Evie ◆XksB4AwhxU:2015/05/20(水) 18:19:18
「……なんなんだ、一体……」
ため息をついたところで、コンコン…と控えめに楽屋のドアがノックされた。
とっさに石を包み直し、脱ぎ捨てていたジャケットのポケットに突っ込む。やがてドアノブが回され、一人の男が姿を現す。
「……土田、どうした?本番前に」
土田はいつもどおりの無表情で、どこか疲れたような顔をしていた。
「いえね、対馬の姿が見えないんで、どっかの楽屋に遊びに行ってるのと思いまして。
 今スタッフ全員で探しまわってるとこなんです」
ああ、さっき会ったぞ…と言いかけて、対馬の言葉を思い出す。

『__黒のメンバーには渡さないでください__』

有田はごく、と唾液を呑みこんだ。
ここで正直に石を渡せば終わる。まだ対馬が黒を裏切ったと決まってるわけじゃない。
さすがの土田も、相方をどうにかしようとは思わないだろう……いや、あの土田のことだ、何をするか分かったもんじゃない。
大体、なんで俺に渡したんだあいつ、何考えてんだ?頭の中を、ぐるぐる回る思考。
数秒か、もっと長く感じた時間が過ぎた後、有田は口をゆっくりと開いた。

「わりい、見てねえわ」
「……そうですか。見つけたら知らせてください」
土田が出て行ったドアに耳をくっつけて、足音が遠ざかるのを確認して、ようやく肩から力が抜けた。
急いでジャケットを着直すと、対馬の番号を呼び出してかける。
「……だめだ、あいつ電源切ってやがる」
「ややこしいことになる前に、石返してなかったことにすればいいんじゃねえのか?
 まずは対馬を探して__」
笑いながら振り返った上田の顔が、みるみる青くなった。
歯をガチガチ鳴らしながら、有田の背後を指さして叫ぶ。
「後ろだ!」
体を左に傾けると、緑色のゲートから伸びてきた腕が空を切る。
「走れ、速く!」
突然の出来事に、腰が抜けてしまった有田の手を引いて、上田が走る。
二人の足音が遠ざかると、誰もいなくなった楽屋には、
ゲートから半分体を出した土田だけが残された。
「……一体、どこまでシナリオを狂わせれば気が済むのか」
ふっと口元をゆるめて、実に楽しそうな笑みを浮かべる。
「本当に、難儀な人たちだ……」
石を握り締めると、空中に生まれた赤いゲートに、頭からゆっくりと呑みこまれていった。


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