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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

778Evie ◆XksB4AwhxU:2015/05/20(水) 18:17:29
その時、上の階からガラスが割れるような音がした。続いて短い悲鳴と、聞き覚えのある怒声が鼓膜を震わせる。
「上田!?」
すぐさま身を翻して階段を駆けあがる。目的の人物が闘っているのが何階かまでは分からない。
ドアをひとつひとつ開けて上田を探す。
2階の廊下に、点々と血の痕が続いていた。丸い形にえぐれた壁を見る。次に屈みこんで、大きくへこんだ床を指でなぞる。
「こりゃ、熔錬水晶の使い手とやりあったな……あの二人の敵じゃねえだろうが、
 問題はパワー負けした時……か」
熔錬水晶には黒い欠片が混ぜこまれている。過去に自身が何度も服用したおかげで覚えているが、
黒い欠片で強化された石は、持ち主の意に関係なく凄まじいパワーを発揮する。
ノーマルなさくらんぼブービーの石で太刀打ちできるかどうか。
「鍛冶の体力次第だが……上の階に逃げて時間稼ぎしてるくさいな」
有田は下唇を舐めると、それを辿って矢のように走る。
「いでっ!!」
慌てたせいで、足がもつれてすっ転んだ。
走り続けたせいで心臓が痛い。呼吸が苦しい。口の中が乾いてのどが痛い。
それでも立ち上がり、壁に手をついて進む。上からは、まだ何かが爆ぜる音、人の言い争う声が聞こえてくる。
「……こりゃ、報いか?」
そう、前もこうやって、息を切らして走ったことがあった。ただ、あの時は追われる立場だったが。
「……因果だよなあ……俺たちって」

【過去】

「これ、お願いします」
U-turn.対馬は物陰に有田をひっぱりこむと、素早く何かを握らせた。
「絶対に黒のメンバーには渡さないでください俺は先に行きますから」
「え?お、おい!」
慌てて引き止めたが、対馬は振り返らず去って行き、スタッフにまぎれた。
「なんだってんだ、一体……」
対馬が渡した包みは、ハンカチで丁寧にくるまれていた。指に硬い感触がつたわる。
結び目を開くと、透きとおった中に虹色の光が揺れる石が入っていた。
間違いなく、対馬のレインボークォーツだ。
「おい、対馬はなんだって?」
様子を伺っていたらしい上田が、後ろから覗きこんでくる。
「あいつ何考えてんだ?石を手放すなんて出たとこ勝負、あいつらしくもねえ」
今回ばかりはその意見に全面賛成だ。
同封されていた手紙を開くと、見覚えのある筆跡が踊っていた。
『突然、石を押しつけられてご迷惑でしょう、すみません。
 ですが、もうこれしか方法が思いつきません。
 俺は自分の中に残る正義感に従おうと思います。
 同じように迷っているお二人に、俺の石を預けます。
 黒は俺の石を……』
そこで筆跡は途切れていた。慌てて書いたらしく、この文面からは対馬の目的が読めない。


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