したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が900を超えています。1000を超えると投稿できなくなるよ。

【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

763Evie ◆XksB4AwhxU:2015/04/25(土) 21:28:34
「あんたらは、何も見てない」
一言一言をゆっくりと、脳に刻みこむように囁く。

「誰も通報なんてしてない。俺たちには会ってない」

やがて、口を塞がれていた警官の目がとろんとなって、焦点が定まらなくなる。

「持ち場に帰れ」
手を離すと、気の抜けたような表情で、ふらふらと公園から立ち去った。

ふうっとため息をついて頭を抑える。芸能人と会った記憶は、かなり強烈な印象を持って刻まれる。
自分たち二人と会った記憶を消した代償は、高くつきそうだ。
「……あれ、上田?」
ぱちりと目を開いた有田が、上半身だけを使って蛇のように近づいてくる。
「おせえぞ有田。逃げられちまった」
「わりい……って、お前どうした?」
「お前がトロいせいで警察来たんだよ。
 俺がいなかったらカツ丼コースだ」
腹立ちまぎれにゴミ箱を蹴飛ばすと、鈍い頭痛の波をやり過ごす。
「……あいつらは」
「もういねえよ。……あいつら手加減してやがった」
「はあ?」
「あれでも全力じゃねえって事だよ。
 加賀谷のパワーならお前アバラどころか心臓逝っててもおかしくねえのに、動けてんだろ」
「……そっか」
有田はうつ伏せになって地面の小石を見つめていたが、やがてくつくつと笑い始めた。
「何がおかしいんだ」
「……いや、ムカつくなーって思ってよ」
ベンチに座ってタバコを取り出すと、次の言葉を待つ。
「俺たちが敵に回っても、本気でぶっ殺そうとしねえんだな。
 マジでムカつく…いや、可哀想だよな」
「可哀想?」
意外な感想に、ライターの火をつけたまま聞く。
「だってよ、こうやって力で勝てば帰ってくると思ってんだぜあいつら。ぜってえそうだよ。
 俺たちが本気で黒にいるって思ってねえんだよ。
 他の黒の芸人なら容赦しねえくせに」
仰向けになると、「ちくしょう…」とうわ言のように呟く。
「それで情けかけたつもりってのが、ムカつくし……可哀想だよ」
上田は物思いに沈んだような暗い目で、えぐれた地面を見つめる。
「いつか潰してやる」
有田は目頭が熱くなったのを誤魔化すように、両腕を目の上で交差させて隠した。
「いつか、助けてやる」
そう言った拍子に、有田の瞳から大粒の涙がこぼれた。
「……今日だけは、泣いていいぞ」
上田が言い終わらないうちに、後から後からあふれる涙を袖でぬぐって泣き続ける。
__こんな惨めな気持ちは初めてだ。
タバコの箱を握りつぶして、上田は胸の奥から湧き上がって来る黒い感情に蓋をした。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板