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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

760Evie ◆XksB4AwhxU:2015/04/25(土) 21:25:48
薄々様子がおかしいことには気づいていたようだが、案外素直についてきた事に些か戸惑いを覚えながらも、
上田は人気のない公園のベンチを指さした。自動販売機の前で財布を取り出すと、振り返って聞く。
「加賀谷はココアでいいか?」
「はい!あの、もしかして上田さんのおごりですか?」
「遠慮すんなって、たかが100円だぜ?俺もそこまでケチじゃねえよ」
「よく言うわ、お前焼き肉に生ビールつけるって言ったくせに、
 結局いつも割引券あるとこだったやん」
「それは有田が言ったんだろ!」
「そうだったっけ?僕忘れちゃいました」
ははは、と乾いた笑いがこだまする。
「……あのな、お前らに大事な話があるんだ」
上田が背筋を伸ばすとなんとなく分かったのか、加賀谷も笑顔をひっこめた。

「……黒に来い」

退路を絶つように、あえて命令口調で告げる。
松本は飲みかけの缶を口から離して、ぐしゃっと握りつぶした。
「え、な、なんで?あの、その、うえださ…」
加賀谷は相方と上田の顔を交互に見て、わたわたしはじめた。
「ど、どど……どう、あの……あ…」
「ワンちゃん、日本語話せてないからちょっと黙ってて」
松本が肩に手を回して落ち着かせると、横を向いてココアをすする。
「俺も有田も、お前らの為を思って言ってんだ。
 黒は手段を選ばねえ。従わないならお前らの行く先はねえんだぞ。
 こんな風にな」
蟻の群れを踏みつぶそうとした有田の足を、横から松本が押さえて止める。
「……モラルを捨ててまで、やりたいことがこれなんですか?」
「そうだな、お前らはそう言うと思ってた。
 でも、もう遅えんだ。俺たち若手が言葉で訴えたところで、何が変わるってんだ?
 自分の力でどうしようもねえことなら、考えるだけ無駄だろ?
 これが俺たち海砂利水魚の、“生存戦略”だ」
ジーンズのポケットに突っ込んでいた右手をとりだす。
手のひらに光るカルセドニーを、ぎゅっと握りしめた。
「……何も考えず、何も見ず生きていけたら、そりゃ楽しいやろうけどな。
 そんな、生きながら死ぬみたいなつまらんことできるか」
海砂利の二人は黙って次の言葉を待つ。
草むらから聴こえていた虫の音が止まった。
「まだ、戻ってこれますよ」
加賀谷の縋るような声。上田はハッと鼻で笑う。
「……俺は後悔なんかしねえよ」
首をこきりと鳴らして、有田が放った言葉に、松本は目を細めた。
「交渉決裂ってか。いいぜ、やってやるよ。なあ上田」
「……しょうがねえな」
海砂利の二人は立ち上がり、距離をとる。
戦闘向きではない上田は安全圏まで下がって、もしものときのために石を握りしめた。


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