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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】
754
:
名無しさん
:2015/04/19(日) 22:30:28
「いくつか質問してもいいか」
「ええ、どうぞ」
「俺と有田は、意見が一致してる。
“黒が白より使えるなら黒、そうでないなら中立”だ」
「……白に行かない理由は?」
「単純に、気に食わねえ。
まあ色々思うところがあんだよ、俺達にも」
曖昧に濁した答えに、土田は一瞬考える素振りを見せるが、すぐに「分かりました」と指を一本立てる。
「その一、黒の芸人から襲われる手間が省ける。
白の芸人は闘いを好まないので、仕事が終わればゆっくり休めますよ」
「……続けろ」
有田が先を促すと、中指も立てた。
「その二、人脈。
まあ…黒があなた達の思っている以上に網を張り巡らせてるってことですよ。
望むならレギュラーも、大きな会場での単独ライブも。
まあ、メリットと言えばこれくらいですかね。
後、黒の命令には全面的に従ってもらう…ということくらいです」
最後の一言は、海砂利の二人にとって「息をするな」と言われるに等しい条件だった。
有田が「マジで?」と声に出さずに聞けば、土田は深く頷く。
「当然、黒にいる以上は黒のために働いてもらいます。
どこそこのスタジオのブレーカーを落とせとか、スタッフにメモを渡せとか、
そういう小さな命令がほとんどですけど、
時には白の芸人と闘って石の奪い合いもしてもらいます。
それが面倒ならどうぞ今のままで」
二人は悩んだ。
黒の芸人がやけに統率がとれていることから予想はしていたが、
元々組織だの上下関係だのといった堅苦しい勢力図に巻き込まれるのも気が進まない。
そこで、土田がダメ押しの一言を放った。
「逆の発想をしてみたらどうですか」
「逆…?」
「オセロを思い浮かべてみてください。
今は、白と黒が同じくらいの数ですが、一枚動かしてやれば、局面によっては……全部が黒になる」
土田は人差し指と親指を軽く合わせて、石をひっくり返す仕草をした。
「あなた達二人が、この石の闘いにおける“神の一手”になればいい。
すべてを黒に塗り替える、一手に」
土田の眼の奥がぎらりと光ったような気がして、有田は一歩後ろに下がる。
「(もしかして、俺達…結構やばい方に行っちゃってんじゃねえのか?)」
隣の上田は禍々しい雰囲気に気づかなかったらしく、握っていた拳をそっと開いた。
恐る恐る、もう一度土田の目を見る。いつも通りの茶色い瞳には、さっきのこちらを射抜くような光はなかった。
「(……気のせいだよな?)」
心の中で葛藤する有田に構わず、上田は一歩土田に歩み寄ると、左手でがっちりと握手を交わす。
「よろしく頼む。
……行けるとこまで行ってやるよ。ほら、お前も」
「お、おう…」
有田も、促されるままに握手する。
握りこんだ土田の手は、氷のように冷たかった。
【現在】
「……土田さんは、その頃から黒だったんですか」
話に一区切りついたところで、上田はお冷で喉を潤す。
木村は、なんと言えばいいのか分からないらしく、目を泳がせた。
「あの頃はまだU-turnってコンビだったけどな。
まあとにかく、あの頃は白も派閥として機能してなかったし、
力関係は黒の方に傾いてた。
有田は未練があったらしいが、俺は身の安全と海砂利としての未来を選んだってわけだ。
まあ人間誰だって自分が一番可愛いだろ?それで何が悪い!…って開き直ってたな。
今思うと結構いい性格してたな」
「遅い中二びょ…モゴゴ」
先輩に無礼を働きかけた鍛冶の口を、木村が慌てて塞ぐ。
「ぶははっ、まあ中二病ってのが一番しっくりくるか。
ただ、枕に頭沈めて足バタつかせる程度じゃ済まないレベルの過去だけどな」
「……なーんか、こっから先はちょっと聞きたいような、聞きたくないような…」
木村の手から解放された鍛冶が息を大きく吸う。
「まあ、続き話すより先に…」
上田はしかめっ面でレジに立つウェイトレスをちらっと見て、領収書を引っこ抜いた。
「そろそろ出るか。続きは歩きながらってことで」
ごちになります!と満面の笑みで言い放ったさくらんぼブービーの二人に、軽く怒りを覚えながらも、
先輩としての寛容さで押しとどめ、手早く会計を済ませる。
連れ立って歩き出すと、鍛冶が「あ、この後ちょっと打ち合わせあるんですよ」と思い出したように手を叩いた。
「じゃあ、事務所まで歩くか。
んー…どこまで話したっけ」
「黒に入ったとこまでです」
「じゃあ、そうだな。お前らお待ちかねの…その石の“前任者”との因縁の関係でも話すか」
「盛ってません?」
犬歯を覗かせて笑う木村に、「100パーセントの実話だぞ」と返して、三人はビル街を抜けていった。
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