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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】
749
:
Evie
◆XksB4AwhxU
:2015/04/16(木) 22:29:02
【199X年 夏】
「だーッ、待った待った!!ストップ、ストーップ!!」
有田が慌てて両手を前に突き出し、降参の意を表す。
恐る恐る目を開けると、加賀谷の拳は有田の顔すれすれで止まっていた。
三人の足元でざあっと砂ぼこりが舞い上がり、消える。
「……し、死ぬかと思ったぁ……」
有田は情けなさ丸出しの気の抜けた表情で、その場にへたりこむ。
「おい、全力でやれ言うたんはそっちやろ」
「だからって真に受ける奴があるかよ!
そこはちゃんと手加減しろよ!!」
「お前の石で武器出せ!」
「いきなりすぎて間に合わなかったんだよ!!攻撃するならするってちゃんと言えよ!!」
勝手なことをほざく有田の肩に、松本の怒りをこめたローキックが決まる。
ぐえっと変な声を上げて地面に転がる有田を見下ろして、唸り声を上げる加賀谷の頭を撫でた。
稽古場で松本の植えたチューリップと戯れていた松本ハウスは、「特訓に付き合って欲しい」とやってきた海砂利を見て、
露骨に嫌そうな顔をした。2週間ぶりの休日を潰したお詫びに焼き肉をおごる約束を交わし、
廃工場で練習を始めたはいいものの…まだ石に慣れていない有田は武器を召喚できず、冒頭の台詞に至る。
「くそ、もう一回!」
「おーおー、ええ度胸や。
あと10分、せいぜい頑張って逃げてみい」
再びうおおお、と拳を握りしめて加賀谷に突っ込んでいく有田を、上田はげんなりした気分で見つめた。
「だいたい、有田さんは言ってることがムチャクチャなんです!」
加賀谷は、動かなくなった体が恨めしいのか、ここぞとばかりに説教モードに入った。
石を使った対価で意識を失った松本を、椅子を並べた上に寝かせると、「そのとおりでございます」と正座する有田。
「やれ手加減しろだの、攻撃する時は先に言えだの…
強盗に向かって“110番するから待ってくれ”って言うようなもんですよ!!」
「はい、おっしゃるとおりです」
上田も隣でひたすら小さくなった。
「……明日も収録なのに」
「はい」
「……ネタ合わせもしてないのに」
「焼き肉食べ放題に生ビールもつけるから……その代わりこれからも特訓付き合ってくれよ」
「え、それホントですか!?やった、やったー!!」
有田はこちらを見て、してやったりという言葉がぴったりの邪悪な笑みを浮かべ親指を立てる。
焼き肉に釣られた加賀谷は、案の定後半部分を聞いていなかったらしく、体が動けば飛び跳ねる勢いで喜んでいた。
そそっかしい相方のおかげでこれからも休日を削られる松本には気の毒だが。
しばらく、3人で何をするでもなく寝転がって体を休める。
「あ、そういえば“これだけは聞いとけ”ってキックさんが」
加賀谷は天井をぼんやりと見つめながら、呟くように聞いた。
「海砂利水魚は、どっちがいいんですか?」
「どっち…って」
「白黒どっちにつくのか、それとも僕たちみたいにどっちも選ばないか」
上田は少し迷ったが、ありのままの気持ちを伝えることにする。
それに、下手に嘘をついてもこの二人には見透かされそうな気もした。
「俺たちは、まあ…自分にとってより都合のいい方につきてえな」
「じゃあ…」
「黒のほうが魅力的なら黒につくってことだよ」
有田も相方に同調して
顔をしかめる加賀谷の隣で体を起こし、タバコに火をつける。
「逆に聞くけどよ。白が俺たちになんかしてくれんのか?
黒の芸人には襲われるし、第一俺はあのうさんくせえ正義感が気に食わねえ」
「……黒がなかったら」
「それは、黒の側から見たって同じだろ。白がなかったら黒が暗躍する必要もねえんだから」
「あ、そっか」
心のどこかにちりっ、と引っかかるものを感じたが、素直な加賀谷はそれ以上考えるのを放棄した。
石の反動で筋肉が硬直していて、正直口を動かすのも億劫なのだ。
「でも」
上田はふうっと煙を吐いて、続けた。
「お前らと戦うのは嫌だな……お前らとはずっと、ただの芸人仲間でいてえから」
その願いが叶わないのは、分かりきっていたけれど。
それでもこの瞬間だけは信じていたかったのかもしれない。
芸を競い合うだけの楽しい日々が、いつまでも続くはずだと。
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