したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が900を超えています。1000を超えると投稿できなくなるよ。

【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

734名無しさん:2013/09/22(日) 17:17:02

奇妙な状況も、慣れてしまえば普通のこと。
奇妙な状況を作り出すこれまた奇妙な石も、数年間を経て日常にすっかり根付いてしまった。
怪我をして「医者の不養生」と揶揄された座長やら、ネタ中に石を置いてくるのを忘れて変身しそうになったという、座長の相方やら。
先輩たちから聞く数々の武勇伝も、そこまで不思議とは思わなくなってきている。
相方の白鳥が手にした石が相当変わった部類にあることも大きい。
念じたら変な柱が生えた、柱っていっても物を乗っけたりは出来ないみたい、なんとなく石を翳してみたら光った、調べたらこれ電気石らしいから、たぶん電気だと思う。
報告に次ぐ報告。たった数日で変化を繰り返す状況。
いちいち驚いていたらキリがないと、ちょっとのことでは動じなくなってしまった。
「……やっぱり、相変わらずなんだ」
「うーん、まあ」
少なくとも、琥珀色の柱越しに普通に話を出来るぐらいには。
コーヒーやウーロン茶を彷彿とさせる落ち着いた色合いは、見慣れれば綺麗なもので、周囲に落ち着きをもたらす不思議な存在感がある。
「……あ、でも、また少し分かったことがあるんだけど」
「何?」
「たぶんこれ、塔だと思う」
「……塔?」
「見てて」
だが、これを作り出す石自体はやはり落ち着きがないようで。
白鳥が再び石を輝かせると、目の前から柱が消え、別の物が現れる。
複雑に組まれた鉄骨に、ご丁寧にも展望台が二つ。
「……東京タワー?」
「そうそう」
その手のお土産も形無しのつくり。色は違えど、かの有名な電波塔が細部まで精巧に再現されている。
「これだけじゃないよー。話題のスカイツリーから近所の鉄塔まで」
と、いうことは試したのだろうか。
以前から趣味は高圧送電線の観察だと言っていた彼女である。
柱、電気という事柄からそう発想しても不思議ではないが、その練習風景を想像すると少しおかしい。
「……何か、凄いような、凄くないような」
「確かにねえ」
変な石だよまったく、そう言いながら、白鳥は石をじいっと眺めている。
「自分で言うのもあれだけどさ、もっとこう……塔に限らず、想像した物をそのまま出現させる、とかなら素直に凄いって言えそうだよね」
ああ、と気のない返事をしながら、川村はもし白鳥の力がそんなものなら、真っ先に作られるのは「吉田くん」なんだろうなあ、と何となく思った。
それはそれで、と思っても口には出さないが。
白鳥はそんな川村の思いを知ってか知らずか、顎……頬に手をつき、微妙な表情を浮かべる。
「……まあ、別にこのままでもいいんだけど」
「けど?」
「戦うんだよねえ……これで」
そう言って、塔に石を翳すと、塔は意思を持ったかのように輝きだす。
白鳥の心底嫌そうな呟きに、川村は曖昧な笑みを返しすしかできなかった。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板