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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

690 ◆1En86u0G2k:2011/02/10(木) 14:31:00

コンビからピン芸人への転換。
芸人としての岐路は振り返れば空白とも呼ぶべき無防備を生み、その隙を狙われてしまうくらいには周囲に名が知れていた。
いよいよ窮地に陥った状況、追随して落ちる思考。そこを突破するきっかけのひとつが有野の介入だった。
「でもあれただの偶然やし、俺そんなに手ぇ貸してへんで」
ほとんど自分でなんとかしとったやん、当人は呆れたように首を振るけれども、重要なのは支援の加減ではない。
彼の言う偶然がなければ多分もっとみっともない有様を晒していただろうし、
松下が残したあの石を、この手に納めておくことも難しかったはずだ。
なにより、自らの意志で立ち位置を決めるという、升野にとっていちばん肝要な点を守れなかったかもしれない。
そういう意味で確かに彼は恩人であった。

「だからあの時助けてもらった人のことも、僕を襲おうとした奴らのことも、優先して考えるようにしてるんです」

自分の本懐を妨げない程度の恩返しと積極的な報復。
特に後者に関しては多少の遠回りも辞さない――まあ、それは余談として。


「変なとこで義理堅いんやなあ」
「そういうほうがおもしろくないですか?」
「おそろしいよ」
「それに有野さんは安心してなさそうだし」
「安心?」
「僕から情報もらって、これで絶対大丈夫だ、自分は安全だ――そんなふうに思ったことないでしょう」
「うん」
「だから狙ってもつまんないっていうか」
「そういう考え方すんねや」


すくめる肩へわざと満面の笑みを向けてから立ち上がる。
素早い撤収は周囲へも言い含めた鉄則だった。
神出鬼没のテロ集団、命名のセンスはさて置いて、そういうポジションは比較的理想に近い。
誰かの何かを――できれば足元など揺らぐはずがないと思っている相手の思惑を――
横っ面をひっぱたくように台無しにしてやるのが、
ひとつ余計に石を抱え込んだ升野の目指すところであった。


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