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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

686 ◆1En86u0G2k:2011/02/10(木) 14:23:04

colors:4 『もちよりブルー・プリント』



「おつかれさまです、」

昼夜を問わず慌しいテレビ局にも人通りの少ないポイントはいくつか存在する。
できるだけ同業者に遭遇しないように、切実な一念が高じて裏道的な場所にすっかり詳しくなってしまった。
「物品庫」だの「基盤室」だの滅多に開きそうもないドアに囲まれた離れの廊下は上下階の喧騒が嘘のように静かで、
そのまま外に抜けられる道であれば申し分ないのに、今でも少し残念に思えるほど。
惜しくも脱出経路とはならなかったその廊下の突き当たりは、しかし別の目的に役立っていた。
ほどなくやってきたのは上背の待ち人。
見上げて挨拶を交わしてから、オードリー・若林は簡潔に要件を伝えていく。
「えっと、こっちはほぼいつも通りです。山崎さんがポロっとまた俺襲われちゃってえ、って言ってましたけど
 あのトーンならたぶん大丈夫で…」


*****


「いっつもそんなトーンやんザキヤマくん」
「それもそうでした」
「こっちもおおむね異常なしやな。ちょっと西の方でなんか起きかけてる、て聞いたけど
 東京はたぶん、しばらく落ち着いてると思う」


逃げという名の徹底抗戦を選択した若林にとって、最も欲したものが情報だった。
情勢は流動的だから必ずしもアドバンテージを得られるとは限らないが、初めの一歩をできるだけ速く大きく踏むには、
とにかく可能な限り周辺の意志を知っておくべきだというのが、かつて攻めの要を務めた彼の結論。
そうして、似た体勢で情報を欲する芸人と、ひそかに手持ちのカードを交換しあってきた。
いま目の前に立つ男――よゐこの有野とも同様に、しかも有野からの申し出がきっかけとなってやりとりが始まっている。


立ち位置は中立、姿勢は引き寄り、広い情報網を有する先輩。
願ってもない誘いを二つ返事で承諾しかけ、踏みとどまってひとつ尋ねた。
「どうしてぼくに声かけてくれたんですか」
有野は一度きょとんとしてみせたあと、ある番組の名を挙げた。
彼の相方がピンで出演するバラエティ。その新レギュラーとして、自分たちの加入が決定してまもなくのできごとだった。
「そっち方面で濱口くんに何かあったら、感付いてくれるかなと思って」
「なるほどー…」
向けられたのが曖昧な正義感の類でないことにある種深く安堵した若林は、こちらこそお願いします、改めて頭を下げたのだ。


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