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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

684 ◆1En86u0G2k:2011/02/10(木) 14:21:11

「別にこんなもんいらねえやって、…今も一応そう思ってるんですけどね。
 こう物騒な話ばっかり続くと、さすがにちょっと」
困ったように呟いて、首元からなにかを引っぱり出す。
武骨な鎖の先で揺れているのは、確かに例の『石』に見えた。
ただ先ほど鳥居に感じ取ったもの――石同士が共鳴したときに生じる独特の気配が伝わってこない。
覗き込みながら亮が尋ねる。

「いつから持ってんの?」
「大分経ちますよ、去年とか一昨年とかそれくらいは。
 でも全然、うんともすんとも言わないんで。来るとこ間違ってんじゃねえかって思うくらい」

石が目覚めるタイミングはそれこそ千差万別――持った瞬間の場合もあれば、数日後、数週間後になることもあると聞く。
けれど年単位でというのはかなり珍しい話だった。
直接打ち明けてくれたのはいつだったろうか、内緒ですよバレたら俺らヤバいんで、そう早口に重ねた伊達は笑っていたが、
とても真剣な目だったのを覚えている。
手ひどく巻き込まれたという話はなかったはずだから、近しい芸人のアシストがあるのか敏感に察知して切り抜けているのか、
とにかく大変な日々であったろうことは容易に想像できた。


「俺のじゃないのかもしれないすねえ…」
石を挟んだ向こう側の曇り笑いを打ち消そうと亮は急いで首を振った。
「なんやろ、でもそれはちゃんと伊達ちゃんのやと思うよ。なんでかってのは、うまく言えへんけど…」
名前が書かれているわけでもこちらが呼んだわけでもない異物は、それでもきちんと持ち主となる芸人のもとへやってくる。
こうして伊達の懐に辿り着き、おとなしく鎖に繋がれているのなら、
きっと『いざという時』に備えてじっと息を潜めているに違いない。
石が目覚めるほどの『いざ』が果たして訪れるべきかといえば難しいところなのだけれど、
それでも、似た色の髪をした男の憂いが、少しでも晴れてほしいと思う。
「そのうち必要になったらちゃんとやってくれる思うよ、な」
沈黙を守る石にも向けた励ましに伊達は、だといいですね、と、
やはり苦く――けれども幾分救われたような表情を浮かべた。


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