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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

680 ◆1En86u0G2k:2011/02/10(木) 14:17:18

colors:2 『パステル・カラーと王子様の憂鬱』



真っ当に生きているつもりがどうしていつもこうなるのだろう。
楽屋の片隅で孤独な戦いを続けながら細長い男は途方に暮れていた。

「でも俺タナちゃんで間違いないと思うよ」
「おれもー」

どいつもこいつも自身を過大に、相手を過小に評価しているとしか思えない。
そもそも事前の危機感すら、指摘されてはじめて気付くありさまだというのに。

「だから理由を!理由をちゃんと言ってって言ってるでしょー!」

たまりかねて叫んだはずのアンガールズ・田中の抗議は、やはりなぜか小さな笑いをその場に広げた。


*****


もちろん田中とて己を最強だなどと自負したいわけではない。
むしろその逆、常に襲撃を危惧するぐらいがちょうどよいと思っている。
ただそれは周囲にも――例えば相方である山根にも、こうして集まっている面々にも――該当する危機感だと考えていて、
言ってしまえば(田中の判断基準で)弱い部類に属する芸人が揃っているのだから、
いっそう団結して立ち向かい、なるべくなら先だって回避し、
痛い目に遭わないよう注意していこう、そう呼びかけたいだけだったのだ。
それがどういうわけか『このメンバーの中で誰がいちばん頼りないか』という話から、
『ぶっちゃけ誰が一番弱いか』というテーマへ論点がスライドし、
大変失礼なことにこの場にいる全員が揃って田中を一番弱い、と断じてきたのである。


「だってタナちゃんの石ってまあまあって言うだけでしょ?」
ややポイントのずれた指摘をするのはドランクドラゴンの鈴木で、そちらの石こそ決定力に欠けると言い返してはみたものの、
「最終的に腕でも首でもキメちゃえば大丈夫だもん」と恐ろしい開き直りを見せられてうっかり怯んでしまった。
「それに結構失敗して、反動で落ち込んだりしてるみたいだし…」
見られたくないところをいつのまにかきっちり目撃しているロバートの山本はある程度力押しが効く能力であるし、
本人もボクシングのライセンス持ちときているのでこれまた反論しづらい。
そもそも、上記のふたりより強いと言い張る(別に弱いと主張する気もないのだが)つもりは元々ないのだ。
まだ石の能力が安定していない者も含めて自分が最弱だと定義されることにかなりの抵抗はあったけれど、
とにかく総合力で勝っていても隙を突かれるケースは多々あるわけで、そこを警戒していこうと――


「ていうか一番気持ち悪いのがタナちゃんなんだから、それで決定っちゃ決定でしょ」

やや遠いところから不意に聞こえたデリカシーの欠片もない声。
田中がキッ、と効果音が出そうな勢いで出先を睨めば、
距離を取って三人の論争を眺めていたインパルスの板倉がなんとも意地の悪い顔で笑っている。

「ほらもう気持ち悪ぃもん」
「だからどーしてそーいう人を傷つけるようなこと平気で言うわけ!?」
「だって事実だし」
血相を変えて詰め寄る田中から大袈裟に身体を逸らしてみせながら板倉は飄々と応じる。
「事実じゃなーい!じゃあどこが気持ち悪いかちゃんと言ってみてよ、」
「その何か変な地団駄みたいの踏むとこ、手をやたら振り回すとこ、でっけえ唾飛ばすとこ、それから――」
「あーもうやーめーてー!!」


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