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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

677 ◆1En86u0G2k:2011/02/10(木) 14:13:14

colors:1 『A.』



揚げ足を取らせたらそうとう右端のほうに並ぶ自信はあるわけだった。

「いやだからさ、時期には個人差があるから、やっぱりその時ハネてたネタが鍵になることが多いわけじゃない」

居酒屋の片隅で笑い混じりに自論を展開する赤い眼鏡の男。
相手がむぐむぐと玉子焼きを頬張りながら頷くのを視界の端で確認し、饒舌に言葉を重ねる。

「何て言うのかな、言っちゃ悪いけど旬のネタって変わってくこともあるわけでしょ。
 それに合わせて融通利けばいいけどそううまくいかないだろうし。
 だからなんだろ、はたから見るとすいません面白さ優勢です、みたいな空気?」

本業に近い勢いの淀みない喋り口、原因は不安と高揚と速いペースの酒。
それにしたって、と南海キャンディーズ・山里はかすかに自省する。
(俺こんな話してていいんだっけ?)


*****


大切に大切に育ててきた企画に新展開が拓けた。
小さな会場を舞台に、どちらかと言えばネガティブな鬱屈を原動力として始まったそのライブは、
着実に規模を広げ、共演者を増やし、ついにテレビという媒体の上で勝負することになる。
根幹から関わってきた者として思い入れも感慨も人一倍どころか三倍は固いはずの山里はしかし、
気合いも新たに迎えたその日の会合を自らの手で大幅に脱線させつつあった。


きっかけはそもそも乾杯の直後、いまや慣習になりつつある身辺の報告会から。
例の石をめぐる小競り合いが、あるネタ中のフレーズ――数年前に全盛期を迎えたもので、
当人が本業で使用する姿をここしばらく見かけていない――を口火に始まったという噂。
奇妙な環境も数年を跨げば恒常化するのだろうか、危機感に負けず劣らずの強さで茶々を入れたい欲が膨らみ、
ツッコミはご法度と思われるポイントに「あえて言わせてもらうと」で切り込んだ結果がこれだ。
目の前の男は適切な相槌とよく通る笑い声のほかには熱心に飲み食いをするばかりで、
いいかげん真面目に話しましょうと制止に回る気配がまるでないから、
酔いとテンションとミートの甘い論舌が好き放題に加速する。

「春日くんだって人事じゃないよ、」
「ワタクシですか」

逸れすぎた会話の編集点代わり、唐突に水を向けてみれば相槌上手は箸を持ったまま目を丸くしている。
軽快なトークの唯一の客であるこのオードリーの春日こそ、
いわゆる『芸人の決まり文句』を発動のキーワードに据えた男だった。
オーケーそれじゃあ想像してみて、グラスの中身を飲み干してから恐怖のもしもを提示する。


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