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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

642 春風はレベル30 ◆1En86u0G2k:2009/07/08(水) 00:22:57


3月になった。楽屋で眺めるテレビ、九州からの中継が桜色に染まった並木道を報じている。
春だなあ、の独り言にそうですなあ、の相槌。ふぬけた会話につかの間の穏やかな日々を実感する。
桜前線が北日本まで届くのはゴールデンウィーク頃だと聞く。やるべきこととやれること、いつか成し遂げてやりたいこと。花が咲いているうちがチャンスだ、全体重をもって格闘しようと思う。
約束された平和を裏返せば設楽の影響力の強さに直結するが、そのあたりの現実を直視するのは目の前の山を乗り越えたあとだ。
若林は確認するように小さく頷き、そうだ、と2つめの弁当の蓋を開けた男に声をかける。

「ネタ作りの方はどうなってますか春日さん」
「ふふふ」
「何笑ってんの気持ちわるい」
「聞けば腰を抜かすぞ!」
「まだ全然できてねえからってんじゃないだろうな」
「………」
「図星かよ!」

どついた拍子に割り箸が飛んだ。ああんもう、なんて気色悪い声をあげて慌てる春日を睨む。
窓から覗く景色を強い風が揺らしていた。

あの時独断で掴んだ権利は正解だったのか、それとも悪手だったのか。
単なる先延ばしと言われればそれまでだし、他にやりようがなかったろとも言いたくなる。
けれど次からは一応断りをいれておこう。頼りになるかは度外視で、状況によっては会議もしよう。先回りして先導するつもりのキャパシティは、簡単に容量オーバーすることが身をもって証明されたばかりだ。
上手くまとまらないままもちゃもちゃと自分の考えを説明し、お前はどう思ってるわけ、と尋ねると、彼はまたしても不思議な返答をよこしてきた。

「だからそこんとこは同意見だよって言ったでしょうが」
「はあ?お前とこのへんの話はしてねえだろ」
「したでしょうよ」
「いつ」
「こないだの。設楽さんとなんやかんやあった日。覚えてないの」
「えー………」

明確に思い出せるのはあさっての方向に飛んだペットボトルの蓋と、ネタ作りを承諾させたくだりまで。正直、どうやって自宅まで辿りついたかも曖昧である。
記憶が引き出せないことを察したらしい春日が箸を置いた。こちらへ向き直る。


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