したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が900を超えています。1000を超えると投稿できなくなるよ。

【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

636 春風はレベル30 ◆1En86u0G2k:2009/07/08(水) 00:14:23

強烈な光も派手な音もなく、インナー限定の攻防は静かに終わりを迎えた。
拾い上げた電話はすでに切れている。妙な展開でびっくりしたろうな、春日は無視して日村に申し訳なく思う。
「それさあ、若林のって、あんまり光んないんだね」
ガードレールにもたれて座り込んだ設楽が言った。俺のもそんなに光んねえの。地味だよね、お互い、全体的に。
苦笑いを返そうとした世界が歪む。ほとんど崩れ落ちるようにして、彼の隣にしゃがみこむ。
「…大丈夫?」
「…はあ、なんとか」
何度か咳き込み、それから急いで距離を置こうとする若林に、今度は設楽が苦笑した。

「もう弾切れだよ」
「え、」
「お互い様だと思うけど。今んとこ、普通にお話ししかできません」

降参の仕草で両手を上げる彼から、独特の気配は確かに消えていた。もっとも、感知する余力もすでになかった。残っているのは火傷に近い痛みを伴った右手の熱さだけだ。
相打ち、か。判定だったら3ー0で完敗だろうな、投げられたタオルを想像して深めにため息をつく。

「そうでもないかも」
「へ?」
「俺、ちょっとくらいお前の言うこと聞いちゃうと思う」

意味を掴みかねて寄せた眉の裏側を、『屈服:相手の強さ・勢いに負けて従うこと』の辞書的な説明が流れていく。
(…負けたふうには全然見えないんですけどもね)
半信半疑ながら、自分の踏み止まりが少しは報われてもいいなとは思った。言うだけタダだし、駄目でもともとだ。
車が3台通り過ぎるくらいの間をたっぷり空けたあと、じゃあ、と出した声は掠れていた。

「5月になるまで、おれらのことは放っといてもらえますか」
「期限付きでいいの?」
「…永久にって条件、出せりゃ出してますもん」
「………まあねえ」

事実、若林も陥落寸前だったのだ。金輪際関わりたくないです級の担荷を切るには、設楽の能力の影響を受けすぎていた。
つまり石を巡るごたごたの末端に留まることを若林は“説得”され、代わりにささやかな命令を下す権利を得たというわけである。
設楽はしばらく目をつぶって何か思案しているようだったが、やがて「いいよー」と拍子抜けするほど軽い声で応じた。
そこでやっと本当に、強張っていた身体の力が解けた。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板