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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

633 春風はレベル30 ◆1En86u0G2k:2009/07/08(水) 00:09:50

夜半はまだ真冬を思い起こす寒さである。春先特有の強い風に煽られて足元がふらつく。
元凶は去らないし抵抗も止めていないので、頭痛は酷くなるばかりだった。
設楽は眉間に深い皺を刻んで横を歩く若林を見やり、頭痛くなんだね、と興味深そうに言った。
「こういうふうに抵抗してくる人っていままであんまりいなかったからさあ」
勉強になります、そううそぶく先輩に、いやおれ経験値積ませに来たわけじゃないんでと相槌を打つ余裕もない。
外に出たからと言って何が好転するでもなかった。がっちり組み合った、いや組まされたまま、じりじりと自陣へ押し込まれている状況。
間を隔てるものがなくなった分相手に触れやすくはなったが、防衛以外の出力をあげれば一気に崩壊しかねない瀬戸際だ。淡々と足場が削られていくのを、先延ばしにするのが精一杯だった。
その果てがどうなるのを極力考えないよう務めて耐える若林に、容赦なく次の一手が打ち込まれる。

「…じゃあさ、春日にもこの話させてくれる?」
「っ!」

今一番聞きたくない名前だった。思わず目を見開いて硬直する若林に、設楽はやっぱりなあと笑みを深くする。
「僕だけでいいっ…て、言っ、」
「んー、あの時はね?でも協力してくれる人が多けりゃ助かるしさ、それに、」
春日連れてこなかったのって、あいつを庇う為でしょ?
指摘されて絶句する。―――庇う?あのポンコツをわざわざ?
てめえは毎回リセットされてんのかってくらい度々ドッキリに引っかかる単純な頭、物事をそのままドーンと受け止めすぎる無駄に広い度量、素直よりバカって表現がふさわしい性格。
(そりゃ確かに設楽さんから石使ってこんな風に声かけられたら、諸々込みであっさりお世話になります!なんつって頭下げちゃいそうだけどさ)
申し出の理由にようやく思い当たり、ぶつけようのない怒りと天井知らずの頭痛に叫びだしそうになる。
ああ、抵抗にこれほどの痛覚が伴うと、わずかでも覚悟できていたら。

「ぃ…ッあ、」
「あーあーあー、ほらもう限界じゃんお前も」

ひときわ鋭い痛みが突き抜ける。たまらずしゃがみこんだ頭上から、別にひどい目に遭わせるつもりじゃないんだって、呆れと困惑を合わせた声が降ってくる。
ちくしょう、仮に百歩譲ってあいつを庇うためにこんな目に遭ってるとしてもだ、そこ読まれてたらなんの意味もねえじゃねえか!
「とりあえず、電話しようよ。春日に」
そっから先はまだわかんないでしょ、電話くらいいいじゃん。ね?
一歩妥協した条件を提示するのは、要求を呑ませるための最後の仕上げ。
その流れを十分すぎるほど理解していながら、若林の手はとうとう勝手に、携帯電話を突っ込んだポケットへ伸びはじめていた。


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