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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】
629
:
春風はレベル30
◆1En86u0G2k
:2009/07/08(水) 00:00:55
考えてみれば中心層からのコンタクトは初めてなのだ。
逃げちゃダメだを早口で3回、繰り返すこと数セット。
おれ追い込まれてるわあと苦笑しながら向かったのは、テレビ局からそう遠くないビルの1階、有名チェーン系列の喫茶店。
テーブルとカウンターを越えて半階分の段差を降りた先、壁際一番奥のソファー席で帝王が眉を下げて笑った。
「ごめんねー忙しいのに」
「いえ、大丈夫です、ぜんぜん」
劇的な変化を遂げたここ数ヶ月は若林の中に、今もって新鮮な驚きと感動を供給し続けていた。
死ぬほど焦がれていたテレビの中、散々憧れていた先輩たちと一緒に番組をつくるという嘘みたいな毎日。
設楽と初めて共演したのは例外的に何年か前になるけれど、今以上に試行錯誤を繰り返す往来で、最初で最後かもしれないと覚悟の緊張の塊を胸に抱えていた。
そのいつかと同じように笑いながら、先日の出演を迎え入れてくれたのだ。面白いんだよ!という褒め言葉付きで。
場を盛り上げるための甘い評価かもしれないが、それでもやはり嬉しかった。
面白い、という単純明快な形容が、どれだけ自分たちの足場を支えてくれるか。
何度となく活躍を目と耳にしてきた先輩からの言葉ならなおのこと、帰路の途中で小さくガッツポーズが出るくらいには。
いっそ前情報がないままならよかったのだ。
そうしたら純粋に感謝していられただろう、例えばいま持ち帰り分の食料を物色しているはずの春日みたいに。
少なくとも“こちらの警戒心を薄めるつもりだったのかもしれない”なんてくだらない詮索を、向けなくても済んだ。
「…どした?」
「や、」
申し訳なさと苛立ちと自嘲。入り乱れた感情が表情に思い切り出ていたらしい。
我ながら呆れるくらい下手な取り繕いに設楽は吹き出し、すっげえ警戒してるね、と言った。
「じゃあ大体わかっちゃってんだ、俺の言いたいこと」
「…予想外れてほしいなーと思ってますけど。切に」
「でもあれでしょ、若林ってそういう勘鋭い方じゃない?」
「嫌な予感ばっかりよく当たります」
次第に本題に近付きつつある場の空気に細心の注意を払ったまま、右手にぎゅっと力を込める。
手の中にこっそり握り込んだ小さな銀色の塊が、じわりと熱を帯びるのを感じながら。
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