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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

597さよならリグレット ◆1En86u0G2k:2009/01/14(水) 03:17:42

光速のランニングバック。
いつか見た漫画のフレーズを、他人事のように思い出す。
そんな大層な二つ名で呼ばれたことなどないけれど、せめて音速、いや高速―
なんでもいい。この際人並みでかまわない。
目の前の相手よりコンマ1秒でも速ければ、それで十分だ。
同じ標的に向かって走るときのコツは体が覚えていてくれた。肩をねじこんで強引に道を空ける。
わずかに広がった視界、ようやく動きを止めた石を掴もうと、伸ばした無防備な指先が地面に擦れる。
摩擦の痛みに奥歯を噛んで、握りこんだ石をポケットの中へ突っ込む動作、その軌道を塞ぐように腰のあたりを掴まれた。
相手の笑う気配がする。石を守ろうとする本能を読んだとでも言いたげな、腹の立つ笑い方。
若林は小さく息をのみ――けれど男のそれよりも数段、底意地の悪い表情を浮かべた。
どいつもこいつも後生大事にすると思ったら大間違いだ。

「こんなもん…っ、いらねんだよ!バーカ!!」

言い放つなり右手を急角度で振り上げる。
相手の側頭部を殴りつけそうになって(それならそれで構わなかったのだが、とにかく)男が反射的に身を捩った。
振り切った先には静かな夜が広がっている。ここは橋の上、ならば闇の奥には川があるだろうか。
まるで竜巻のようなフォーム。我ながら見事だと思った。もしかしたら描く軌道は美しいフォークですらあったかもしれない。
大の男ふたりがみっともなく争った対象物は、きっちり3秒後、ぱしゃん、と、まるで頼りない水音を夜に響かせた。


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