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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

586とびだせハイウェイ ◆1En86u0G2k:2009/01/08(木) 17:07:17

「ストーップ!!」
捉える前に中空で止まる。拳どころか身体全部が、中途半端な形で止まる。
背後からのホールド。
相手の体格と自信にあふれた張りのある声にピンとくるものがあったのか、若林は振り向く努力もせずにじたばたと暴れる。
「んだよ!離せよ馬鹿!邪魔すんな春日!」
その日は番組でもライブでもなかったから、不自然なまでに綺麗に揃った前髪も、ピンク色のベストもそこにはない。
いつもよりずいぶん普通の成人男性らしい見てくれをした春日―オードリー・春日俊彰は、がっちりと若林を抱えたまま、少しずつ後ろに下がりはじめる。
「離せってんだよバ春日!!聞こえねえのかよ!聞こえてねえわけねえだろ!!」
「いいからいいから」
「よっくねえよバーカ!!ふざけんじゃねえぞこの野郎!!」
機銃掃射よろしく浴びせられる罵声をはいはいと躱しながら、あっけにとられて立ちすくむ男に声を投げる。
「早く、」
「え、」
「そんなに長くは抑えてられないんで」
ほんとは抑えなくてもいいかと思ったんですが、そう続ける前に春日の意図は相手に伝わったらしい。
転げるような走り方で逃げ去っていった。比喩の生まれる瞬間に立ち会った気分だった。
黒いダウンジャケットが夜の闇に消えたころ、暴れていた若林はようやく静かになった。
抑える力をゆるめると、あっという間に振りほどかれる。

「…なんで止めたんだよ」
「あれくらいでいいだろ、もう」
「全っ然よくねえ。なんだあいつ、なんだよ、ほんっと腹立つわ」
「それはわかるけれども」
「わかってねえだろ、お前言われてねえじゃん。言ってやろうか俺何言われたか。すげえぞ、全部否定されたようなもんだぞ」
「いいよ言わなくて」
「じゃあ止めるなよ!」
「お前が腹立ってんのはわかってるし、本当はそうじゃないのも知ってる。いいだろ、それで」
「…なんだそれ」

消化不良の怒りはまだ若林の身体の中で暴れている。ベクトルの先を求めた力が無遠慮に胃に衝突してきて吐きそうだ。
こんなものを抱えて黙って眠れというのか。理不尽だ、と思う。知っていたつもりだったが、理解の範疇を越えていた。
代わりに睨みつけた春日の横顔は相変わらずフラットで、思わず舌打ちが出た。
理不尽はこんなところにも転がっている。
体勢を整えるふりをして春日の足を踏んでやると、踏んでるよ、と言われた。
わざとだよばか、と返した。


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