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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

585とびだせハイウェイ ◆1En86u0G2k:2009/01/08(木) 17:05:46

(石さえあれば)
(石さえなけりゃ)
(どいつもこいつもそんなつまんねえことばっかりで)
(…そんなふざけた話で俺を、俺らを、)
(……いったい、なんだと、おもって、)

どこか遠くでクラクションが高く響いた。
「………」
その音を合図に感情は切り替わる。再び浮かべたのは全身全霊を賭けた侮蔑と憎悪。
殺意が視線に宿るなら、7回は相手を小間切れにできそうなぐらいの、とびっきりの負の感情だった。
「…おまえ、よくも」
男が気圧されるように後ずさったのは、何も向けられた二人称に驚いたせいではない。
「よくも、そんなこと、言えるな」
体格の差や黒い欠片の効果で、たやすくアドバンテージを取れると、今の今まで確信していた。
それがこの瞬間、通用しないかもしれない、と本能に警告を鳴らされたためだった。
生半可な優位性はいとも簡単に跳ね返されて無に帰る。
それを伝えるに足るほどに、無力なはずの彼は、オードリー・若林正恭は、心の底から怒っていた。

長い時が流れた気もしたが、おそらくたかが数分だろう。真冬という度を超えて、場の空気がかたく凍っているだけだ。
「そんなにたかが石っころがすげえすげえっていうんなら」
やがて若林はぼそりとそう呟くと、傍らに転がっていた小石を拾い上げ、右手にぎゅっと握り込んだ。
「おまえをぶん殴るのに、どれっくらいか貢献してくれんのかよ」
返事は無かった。怯えるような気配だけがかすかに伝わった。
「…まあいいや」
期待していなかったので気にも留めない。異物を握った拳を引いて前方への距離を詰めるイメージ。
「殴ってみれば、わかんだろ」
物騒な呟きは口の中からちゃんと外へ出ただろうか。
そんなのもどうでもいいや、と思った。聞かせるまでもないし、聞いて欲しくもない。
若林は目の前に立つ男をもう同業者だとは思っていなかった。あれはただのくだらない、敵だ。
(ならぶん殴ったっていいじゃねえか)
およそ三十路の入り口に立つものらしくない短絡な思考でもって、ただ眼前の敵を打ち倒すがため、若林の拳はそれなりのスピードで男を――


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