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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

576 ◆NtDx8/Q0Vg:2008/12/14(日) 20:15:22
 一方、庄司智春はポケットに手を突っ込みながら、呑気に廊下を歩いていた。
 全員が石を持ってた。すぐに解った。きっと皆解ってた。だけどその場で誰も何も言い出さなかったから、庄司も何も言わなかった。
 皆持ってんじゃん、と、驚きと同時に連帯感というか、四人に対して仲間意識の様なものを覚えたのだけど、恐らくは他の所有者達と同じ様に彼らもまた『石』という単語を口にしたり耳にしたりしたくないだろうからと、自粛した。
 どうしようとかは思わなかった。相方である所の品川を思い浮かべる事さえなかった。
 岡田も田中も山根も波田も皆優しくて良い人だから、彼らが自分に危害を加えるだとか、そんな事は有り得ない。庄司はそういうものの考え方をする事が往々にしてあった。
 少し嬉しそうに、四人を思い出すかの様に、忍ばせていた石に触れる。
 『疑う』という発想そのものを、庄司は持ち合わせていなかった。だって彼らは自分に優しいから。

 波田陽区は元来た道を振り仰いだ。
 自分を除いた四人に対して、石は五つ。石を二つ持っているのが誰かも、解ってしまった。
 あの人達に限って、とは思う。実際、石を集め、配り歩き、人より多くの所有者に接して来たという自負を持つ波田の、所謂『悪い人達』プロファイリングに、四人は当てはまらなかった。
 だけど些細な言動に気を配り、意識を働かせてしまうのは、この争いに巻き込まれた者の宿命か。
 しかし正直、波田は彼らが黒いユニットかどうかにさしたる興味を抱いてはいなかった。まず第一に疑うべき事ではあるし、もしそうであれば全力で阻止しなければならないとは思っているが、それは波田が四人に気を配っていた最大の理由にはあたらない。
 波田が興味を抱いていたのは、彼らの行動理念だった。
 所有者が石を呼び、石が所有者を呼ぶ。あの四人も恐らくそうして呼ばれ、石を手にしているのだろう。厄介な代物だ。いざこざに巻き込まれる事も、一度や二度ではなかった筈だ。
 なのに彼らは石を捨てず、所持している。それは何故なのか、理由が知りたかった。しかしはっきり口に出して問う訳にも行かなかったので、波田は四人の一挙手一投足、一言一句を逃さず捉える事にしたのだった。
 知ったとして、どうする? それは波田にも解らない。
 ただ、石を持つに相応しくない…さしたる理由も持たずに所有している者がいたとしたら。
 その時は、その人の石を貰うか、さもなくば、奪う、という事になるかも知れない。
 まあこの、石の世界に勝るとも劣らず厳しい世界を生き抜いている人達なんだから、大丈夫だろうとは思うけど。うん、大丈夫だろう、多分。
 波田はそこで思考を終え、漸く足を前に向けた。


 田中と山根は無言で廊下を歩き、
 岡田は一人で頷きながらずんずんと歩みを進め、
 庄司はにこにこと、次また集まる時に思いを馳せ、
 波田は一度ギターを弾く振りをしようとしたが、止め、スティックでドラムを叩く真似をした。





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ヘキサゴンのエアバンド〜ごめんよ金剛地〜でした。続きません。
テレビで見ていて石持ってる人ばっかだなーと思ったので。
警戒したり信頼したり喜んだり興味を持ったり。色々です。
お粗末さまでした。


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