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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】
560
:
BERSERKER of OLIVE
◆NtDx8/Q0Vg
:2008/01/20(日) 06:21:39
ソファの上で、井上はぶるぶると震えていた。
唇は紫色に染まり、歯はかちかちと鳴っている。
その背を、河本は乾布摩擦の様に激しくさすってやっていた。
それに合わせて井上の全身もガクガク揺れる。
「あいつら何処まで行ったんやろ。これで入れ違いとか面倒臭い事なってなかったらええけど」
心配しているのか文句を言っているのか、微妙なラインの声色で河本は言った。
その河本の目を、井上は見れないでいた。
どういう事なんやろ。井上は揺さ振られながら必死に考えた。
庄司と二人でいた時、現れた男は一人だった。
だから井上は石を使った。相手の石さえ封じてしまえばもう相手は何も出来ない。戦闘終結、ハッピーエンド。
ところが目を覚ましてみれば、一緒にいた筈の庄司はいないし、時計は妙に進んでいた。
敵が複数いたり、石が複数あったのかも知れない。そう考えれば何も不自然な事はない。
だが何より引っ掛かるのは、井上が石を発動させた瞬間だ。
井上は庄司に背を向け、若い男の方へ突進した。
だがマグロとなって床を滑る正にその瞬間、凍り付く直前の井上の足は、進行方向とは逆の床を蹴っていた…気がする。
見てはいない。自信も確証もない。ただこの身体が、足が、逆を蹴ったと言っている。
逆を蹴って行き着く先は、同い歳の後輩の所。
どういう事なんやろ。井上はもう一度心の中で呟いた。
井上の唇にやっと赤みが差して来た頃、井上さん戻ったんすか、と声が聞こえた。
品川と、庄司だ。
二人揃っているのを確認すると、河本は安堵して眉尻を垂れ下げた。
いやー参った、と言いながら品川はソファの背もたれに手を突いた。
「別に何もなかったっすよ。多分井上さんが元に戻るのに時間掛かってただけじゃないですか?」
「…ふーん? まあまだ聡の石よぉ解らん所多いしなあ。何もなかったんならええわ。
 それにしてもおもろかったでー、俺が庄司何かあるんちゃうかって言った後の品川!
 もうめっちゃ慌てまくって俺に質問攻めでうっっっざいの何の!
 しまいには立ち上がって、『河本さん、井上さん頼みます。俺…』、」
「ちょちょちょ、…それ本気で恥ずかしいんで、止めて貰って良いすか?」
二人のやり取りを見ながら、庄司は手を叩いてケラケラと笑っていた。
が、井上の視線を感じて向き直る。
どうしたんですかと言われても、何と答えて良いか解らなかった。
その井上の肩に掛かってる物を見て、庄司は、あ、と声を上げた。
「良いですよ俺の上着。まだ着てても」
「…え? あ、いや、ええわ、もう大丈夫やから。返すわ。庄司のやったんやな、これ」
羽織っていた上着を脱ぎ、庄司に渡そうと手を伸ばす。
「庄司何ともないん」
「はい全然」
「石も? 普通?」
「はい、何もないですよ」
「あいつどうしたん」
「帰りました」
そう、と井上が言うと、庄司は一瞬不思議そうに瞬いたが、何も言わず井上から上着を受け取った。
「おい庄司、そろそろ」
「あ、もう?」
品川が声を掛けると、庄司は顔を上げて品川の横に立った。
品川が携帯の時計を見せると、ほんとだと言って上着を着た。
「俺らそろそろ打ち合わせあるんで、行きますね」
「そか、じゃあな。お疲れさん」
「はい、お疲れ様です」
会釈して、二人は河本と井上に背を向けた。
無言のまま、それを見送る。
「あの二人…偉いなあ」
はあと息を落として河本は呟いた。
「狙われるん解ってんのに白やてはっきり言い切って、そんで何かでっかい相手と戦ってるんやもんなあ」
俺にはムリや、と河本は井上に言うでもなく一人ごちた。
井上がソファから立ち上がる。
河本の後頭部をじっと見詰めた。
確かに自分達にはムリかも知れない。だけどそれは、偉い…んだろうか。
「俺らは、このままでええんちゃうかな」
いつもはぼんやりと抜けた事ばかり言っている井上にしては珍しい、まともかつ真面目な言葉。
振り向いた河本は、井上の眼が自分の遥か向こうを見据えているのを見て、ただ、そうかな、と返すより外なかった。
仲の良い後輩だけれど、彼等と自分達は酷く遠く、離れてしまったのかも知れない。
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