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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

558BERSERKER of OLIVE ◆NtDx8/Q0Vg:2008/01/20(日) 06:14:39
「言い方は悪いけど、俺はそうだと思ってる。俺達だって石、使う訳だし」
「じゃあ、庄司さんは石をどう使って…石は、庄司さんを、どう、使ってるんですか?」
「さあ」

言い様のない、得体の知れない気持ち悪さが全身を這い回る。
つ、と背中に冷たいものが伝った。
庄司の口調は優しく、一つ一つの単語もとても柔らかいのに。思わず一歩、退いてしまいそうになる。だけど耳は庄司の言葉を忠実に待った。
そんな男の気持ちなど何処吹く風とばかりに、明るい口調で庄司は続ける。

「お前今までただ石振り回してただけだと思うけど、これからは考えてみて、お前の石の事。
&nbspこいつは何考えてんのかなとか、今何したいのかなとか。その内自分の事考えるみたいに、自然になるから」
「石の事を、自分の事みたいに」
「うん、多分大丈夫。お前の事選んでくれた石なんだから。
&nbspこっちがこいつの気持ち汲んだら、その分こいつもこっちの気持ち汲んでくれるから。ほんとだって。
&nbspこいつと一緒に今まで戦って、乗り越えて来たんだろ? こいつもお前の相方みたいなもんじゃん」
「……………」

いつの間にかポケットから石を取り出し、男は手の中のそれをまじまじと見ていた。
次いで庄司を見ると、な? と柔らかい笑顔を向けられた。
思わずこちらも笑んでしまいそうな表情だが、今はとても笑い返す気になれなかった。
自分の気持ちと、石の気持ちと―――考えた結果が、庄司の今の行動なのだろうか。

「石の気持ちと、庄司さんの気持ちを汲んだ答えが、『俺と今戦うのは面白くない』って事ですか」
「そうなる、かな」
「何か、…変、じゃないですか?」
「何処が」
「だって、俺が石持ってまだ日が浅いとか、俺のテンションが下がってるとか、だから奪ってもつまらないとか。
&nbsp石を奪うのが目的って言うより、ただ戦うのが楽しいって事じゃないですか、それじゃ庄司さんも石も、ただの戦闘―――」

じ、と真っ直ぐ見返す庄司の瞳を見ている内、あれ、と男は思った。
この人の眼、こんなに色素が薄かっただろうか。
黒でもない。茶色でもない。少しくすんだその色は………

「な…!! ……んでも、ない、です」

先に見たアメ玉の様な、ビー玉の様な石ころを思い出して、いよいよ額から汗が滲み出た。
一方の庄司は、途中で言葉を切られて不満そうに眉間に皺を寄せていた。

まるで見えない何かに見られている様な、奇妙で怖ろしい感覚。
その正体が、解った気がした。

庄司は首を捻ったが、まあ良いや、ともう一度欠伸した。

「俺が言えるのはそんくらいかなあ。まあほとんど受売りに近いけど」
「誰の………?」

うーん、と唸って、答えない。
口元は笑っていたが、俯いていた為に表情までは見えなかった。

「あ、後、白と黒の事は知っといた方が良いよ。入る入らないは別にしても、知るだけで相当楽しくなるし」

何が楽しいのか、とはもう訊く気力も起きなかった。
ただ、『入る』『入らない』と言うからには、白と黒は何かの団体の事なんだろうなと思った。

「俺が黒に入ったらどうなるんですか」
「え、どうなんだろ」
「庄司さん、どっちですか」
「俺ー…は、白。けど、ごめん俺実は良く知らないんだよ。黒とか白とか。だから本当は上から言える立場じゃないんだけど」

苦笑する庄司に、男はやっと小さく笑い返す事が出来た。
その瞳はもう黒くころころと動いていて、男の恐怖心も気持ち悪さも、波の様に消えて失せた。同時に堰を切った様に汗が滲み出す。安堵の余りその場にへたり込んでしまいそうだ。
だがやはりそんな男には気付く様子もなく、庄司は携帯で時間を確認した。
本格的に眠そうに欠伸して、男の方へ足を進めて来る。
思わず身構えたが、庄司はそのまま男の横を通り過ぎて行く。この話はこれで終わりという事だろうか。
男は庄司の後ろを付いて歩いた。

「大人しそう、お前の石」

前を向いたまま突然言われ、男は、は、と咽喉から間抜けに空気を漏らした。

「俺の石と逆だ」
「そうなんですか。気性が荒い感じなんですか?」


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