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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】
549
:
日常のルール
◆1En86u0G2k
:2008/01/17(木) 23:45:56
そこは某テレビ局の片隅にある、ほとんど使われなくなった倉庫の中。
時刻は夕方4 時半、忙しく行き交う人々の声は遠く、さざめきのように聞こえている。
「な…なんのことか、僕にはさっぱり…」
ドアを背に、なぜかペットボトルを持ってたたずむ相手から距離を置くため、男がじりっと後ずさる。
「そないビビらんでもええよ。なんもせえへんって、頼みたいことがあるだけやから」
男にのんびり呼びかける芸人の名は平井 善之―アメリカザリガニのうるさくない方。
警戒を解かないままこちらを睨むように見上げる男のズボン、右ポケットの膨らみを指してへらりと笑う。
「とりあえず、欠片持ってたら、渡してくれへんかなぁ。黒いやつ」
「………!!」
驚愕に息を詰まらせた顔色は所持したものの正体と企みを確証づける。
続いて目の色は明らかに警戒から敵意へと変わり、首筋に走る悪寒が誰かに受けた思考汚染を予感させて。
(うーわ、ホンマにこいつやったんや)
前情報を手に入れたとは言え、平井の中では賭けに近い感覚の断定だったが―どうやら大当たりらしい。
全然嬉しくないけどなぁ。ぼやきながら首にかけた小瓶の中に意識を集中させれば、じわりと暖かい感覚が広がってゆくけれど。
“―倉庫に水って、まいてもええもんかね?”
ついでに脳裏に響く低い声が、面倒な問題をもうひとつ平井に思い出させた。
要は相方任せ―もとい、相方次第だったのである。
石を手にして、妙な争いの存在を知って、最初に気になったのは柳原の意志と動向。
多少予想してはいたが―案の定柳原は今の状況に憤り、「なんとかせなあかんやろ!」と、熱血マンガの主人公並みの勢いで言い切ってみせた。
それなりの力を手にした上での発言かと思ったが、完璧な補助系だと明かされて、どこまでもあーちゃんやわ、心中でこっそり嘆いた記憶がある。
この争いにおいて十分な力を持たない者に訪れる悲劇的な展開といえば、やはり、歯向かってあっさり返り討ちに遭うパターンだろう。
柳原の意見を尊重すれば、属するべきは黒でなく白。色の性格上白が正統だろうか、それなら大概正統派の方が苦戦を強いられるものだ。
アニメにせよゲームにせよマンガにせよ、魅力ある圧倒的な力を持った相手が主人公の前に立ち塞がることで、物語は大きな盛り上がりを見せるのだから。
はなから気の進まない争いではあったが、正義感だけで突破できるほどこの争いは甘くなく、そして柳原が傷付くのは平井の本意でもない。
というわけで彼は、柳原が見抜いた嘘やごまかしを元に探り当てた企みの、その首謀者の元へ出向いては、トラブルが起きる前にせっせと潰す日々を送っていた。
その方が派手な争いを避けられたし、石は戦闘向きでも、持ち主の意志はまた別のものである。
(ほんまは俺の方があいつみたいに、探れる能力やったらよかったのにな)
元々隠しアイテムや秘密のワープポイントに心躍らせる方だ、真っ向勝負はあまり得意ではない。
ただ柳原も柳原で苦手分野―相手の隠された本心を知るたび落ち込んでいる―に奮闘しているので、不平を言うつもりは今のところ、なかった。
真実を引きずり出すには他人や仲間を信じすぎている相方の思考が、どこかで落とし穴になるのではないかという危惧だけは、常に抱えていたけれど。
「…あ、ヤナ?終わったで、うん、正解やった」
携帯電話を肩と頬で挟みながら平井は作業を続ける。
“若手が大量出演する番組の合間を狙って、黒側が一気に仲間を取り込もうとしている”
不穏な噂は現実になりかけていたらしく、実行犯として複数のスタッフの存在が疑われ、平井はそのうちのひとり―大量の黒の欠片を渡された男に接触した形だった。
『大丈夫やったか!?ケガは!?』
「んー?いや全然……なんもしてへんよ!めちゃめちゃ穏便やって」
傍らで倒れる男は気を失っているらしいが、時々小刻みに痙攣していた。
とはいっても蔦で縛り、葉をけしかけて徹底的にくすぐり倒しただけなので、それほど経たないうちに目覚めるだろう。
「持ってた欠片も消さしてもろたし、そのへんのことは忘れるやろ…そっちは?」
『今、岡田さんと一緒に追っかけてる!こいつは、脅されてただけ!多分、いけるはずや!』
走りながら話しているのだろうか、必要以上に声が大きい。平井は思わず電話を落とさない程度に顔を背け、それからふと電話を床に置いてみる。
「あー…、この方が全然やりやすいなぁ」
『何が!?』
「今掃除中やねん」
機材の類は見当たらなかったが、水浸しの床を捨て置けばスタッフの彼が怒られるだろう、それはさすがに気の毒だ。
終わったら行くわ。届ける気のない声量で苦笑して、平井はそれきり水拭きに没頭した。
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