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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

547日常のルール  ◆1En86u0G2k:2008/01/17(木) 23:44:17


出番を待つ、テレビ局内の楽屋だった。
時刻は正午を回ったところ。テレビの中では人気俳優の登場に、黄色い歓声が上がっている。
その音に紛れ込ませるようにして、男が一人、携帯電話を手にしていた。
「…確かに、明日の特番、楽屋の振り分けが変わっとるわ。5つにそれぞれ分かれる予定が、大部屋ひとつ。ダブルブッキングちゅうわけでも、ないみたいやし…」
メモを片手に渋い顔のまま話を続けるのは、ますだおかだの小さい方こと、増田 英彦である。
「で、部屋割り担当が、お前が怪しい言うてたスタッフや。…これは確定かもわからんなぁ」
電話の相手は後輩との会話から、不審な気配をいち早く察知した柳原。懸念のせいだろうか、少し声のトーンが低い。
その音階を耳に時計を見上げれば、収録の開始時間はとっくに過ぎ去っていて。
といっても少し前、楽屋を訪れた若いスタッフが報告していったから、事情は把握できていた。
―ちょっとトラブルで、開始遅れてます。ああ、でも30分ぐらいで!ほんとに、30分ぐらいで!
そう聞かされてから、すでに1時間が経とうとしていたけれど。
(うわー…あの子、正直に言うてくれたらええのに)
全く始まる気配がないのを憂うべきか、それとも作戦会議を続けられると喜ぶべきか。
唸りながらテーブルに転がしていた石を指先で転がせば、応じるように淡い光が点滅する。
“…まだ、ヘコんでんの?”
脳裏で問いかける、自分に似た声。どうやら、責任を感じているらしい。


要は、ひたすらに不満なのである。
石を手にして、妙な争いの存在を知って、真っ先に懸念したのは芸人が芸人でなくなってしまうこと。
振り回される日々、費やされる時間、動向の探り合い―石がなければ起こらなかった、騒動の全て。
芸人は芸を磨き、それを披露し笑いを取って、同業者を含んだ観る者すべてを、楽しませるのが仕事である。石をめぐるややこしい諍いも、その結果付く傷も、全く意図するところではない。
この争いに強制参加するはめになった芸人を待つ恐るべき展開といえば、やはり、怪我やショックが元で活動自体に支障をきたすパターンだろう。
才能や目標に壁を感じてならまだしも、そんな理不尽な原因で芸人が減るかもしれないことが、とにかく増田には許せなかった。
せっかくみんな、それぞれ一生懸命頑張ってんのに。なんでこんなもんに、邪魔されなあかんのや。
はなから傍観するには腹立たしすぎる争いと思っていたから、状況を打破しようと決意するのはごく自然な流れだった。
というわけで彼は、芸人側から出た情報にスタッフ等別方向の関係者から聞き込んだ情報を重ねることで、これから起こる騒動や策略の概要を明確に把握し、先回りして争いを終わらせようと尽力している。
立ち位置は多分、白寄りなのだろう。どうせなら自らの考えと近い側に協力した方が、迷いも生まれないはずだった。
(ほんまは俺がもっと、そういう方向に強い石やったらよかったんやけどな)
増田の石には手にした物体を大リーガー並みのスピードで投げられる力が宿っている。
正直、求めていた類の能力ではなかった。つい最近も、逃げる黒側の若手に手加減して投げた財布がよりにもよって頭に命中し、相手が2日寝込んだと聞いて死ぬほど落ち込んだばかりだ。
相手を傷つけない能力が欲しかった。そう、例えば相方のような、何だったら笑えるぐらいの――


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