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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】
546
:
日常のルール
◆1En86u0G2k
:2008/01/17(木) 23:42:29
都内某所、ファミリーレストランの一角。
時刻は夜の11時。店の奥に設けられた大人数用の席いっぱいに、たくさんの若者が陣取っている。
その風貌は様々だったが、とにかく彼らは、ああだこうだとひとつの議題について話し合っているようだった。
リーダーらしい男の声がボリュームを絞りつつもあまりに甲高いので、店員や客が時々、驚いたようにそちらへ目を向けている。
「…うん、とりあえずこの方向やな。コント3本と、最後にみんなで1本、ドカンとしたやつ」
たくさんのメモ書きの末、しっかりした字で書き直された計画を指で示しながら。
総括としての高音に一同が、自分たちのライブが少しずつ形になりゆく嬉しさと緊張感を交えた顔で頷く。
「じゃあみんな、大体何やりたいか考えとけよ〜。次の会議は…」
「…あのっ、柳原さん!」
小さく叫ぶような声は、携帯電話のスケジュール帳を呼び出そうとしていた男―アメリカザリガニのうるさい方こと柳原 哲也―の指を、止めた。
目線を上げれば、ふざけながらも沢山のアイディアを出してみせた後輩が、一転して顔を曇らせている。
(うわ、またか)
喜べない経験の豊富さで、予測は容易だった。ここ最近、ライブの打ち合わせ後はほとんどこんな調子なのだ。
手首に巻いた革紐の、そこに通した白い石がぼんやりと光る。
“…出番ですかっ!?”
自分よりさらに少し高いハイトーンボイスが、意気揚々と、柳原の脳裏に響いた。
要は心配性なのである。
石を手にして、妙な争いの存在を知って、真っ先に恐れたのは親しい者が巻き込まれること。
特に後輩たちは―見た目オッサンみたいなんもおるけど―まだ若く、芸歴も浅い。
何を基準に芸人たちへ渡るかは謎のまま、石は不気味な勢いで広まり続けてはいたが、基本的に年齢や知名度と石の所有率は、ほぼ反比例のグラフを描く。
この争いにおいて文字通り無力な若手たちにとっての最悪の展開といえば、やはり、強制的に先輩芸人に利用されてしまうパターンだろう。
実際、柳原自身も名も知れぬ若手に襲われた経験が何度もある。
話し合いの全く成立しない、誰かに操られた目とうつろな表情。回避という名目で行われる反撃と、傷付き倒れるその姿。
はなから納得のいく争いではなかったが、己の相手が見知った後輩になると想像すれば、許しがたいのはなおさらである。
というわけで彼は、情報収集を積極的に行い、同時に石を使ってその裏にある嘘や策略を発見し、必要であればそれを周囲に知らせ…
とにかく災厄が起きる前に叩くことに力を注いできた。
(ほんまは俺がもっと、直接色々できたらよかったんやけどなぁ)
正面突破ではなく抜け道を探すようなやり方は、あまり得意ではなかった。
ただ十分な力があればあるだけ突っ走ってしまう柳原のこと、能力が攻撃系でなかったのは、実はとても幸いだったのかもしれない。
決定的な力の行使を他人に―例えば先輩や相方に―ゆだねてしまう苦しさが、心に追加されてしまうことを除いては。
「…柳原さん?」
名を呼ばれ、はっと顔を上げた。
見回せば後輩たちは不思議そうにこちらを見つめていて、ああごめん、それで?と慌てて話の先をうながす。
ライブ前に聞いた妙な会話。先輩や後輩のささいな変化。同期にまつわる気になる噂。
誰々が石を手にした、誰々が襲われた――
報告される情報は雑多でとりとめもなく、結局争いに関係のない話だったりもする。
ただそれも全体に広がる不安と恐怖の成せる技なのだと思えば、無下に聞き流そうとも思えないのだった。
(…頼られてるんやもんな、俺)
それに今度の話は核心を突いていた。間近に控えた番組収録における、スタッフの不自然な動きと急な予定変更。読みが当たればターゲットを若手に絞った、大掛かりな作戦が練られている可能性が高い。
緊張と責任にわずかな喜びを混ぜて気を引き締め、対応策と参加できるメンバーに思いを巡らせー
途端、別の後輩が横から切羽詰まった声を上げた。
「あぁもう絶対あいつ嘘ついてると思うんすよお!柳原さん、一度会ってくれませんか!?」
「お、ええけど…誰や?別の事務所?お前の同期か?」
「僕の彼女です」
せっかく入れ直した気合いが、見事に崩れた。すう、と息を吸い、高音のツッコミを、一閃。
「―俺は嘘発見機ちゃうわっっ!!!」
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