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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

543BERSERKER of OLIVE ◆NtDx8/Q0Vg:2008/01/07(月) 22:45:27
「えっ、あんなって、まだあのままなの? あの、」
「築地のマグロな。石の凍結とかすげーけど、あの格好のままフリーズはちょっと勘弁だわ」
「確かに。俺もヤかも」

薄く笑って、庄司は両手をポケットに突っ込んだ。
だが不意に、何かに気付いた様に左手を見る。
どした、と品川が訊くも、何でもないと返された。

「で、あいつ誰よ。見た事ないけど」
「あいつ?」
「さっきの若いの」
「ああ。何か、最近来たばっかの若手だってさ。何かあんまここ知らないらしいから、社内見学してた」
「お前何ともねえの?」
「何も」
「あそ」

何の為に走り回ったんだと、品川は息を落としながら床を見た。
まあ何かあったと決まった訳でもないのに、少し姿が見えないからと勝手に慌てたのは自分だ。
いやむしろ、何もなくて良かったじゃないか。
井上さんの解凍にタイムラグがあっただけかと、そう思う事にした。

「もしかして、」

頭上から掛けられた声に顔を上げる。
目の前に立つ歳下の相方は、酷く穏やかで柔らかい、大人びた笑顔を見せていた。

「捜してくれてた? 品川さん、汗だくじゃないですか」
「うるせぇ!」

キャラを作ってそう言うと、くしゃっと子供の様に相好を崩す。
よいしょと品川が立ち上がると、それを見て、庄司は伸びをしながら歩き出した。

「…ありがとな」

品川の数歩先を行きながら、聞こえるか聞こえないかの声量で落とされた、庄司の声。
滅多に言われないその言葉と、普段は高めで張っている相方にしては稀に聞く、低くて落ち着いた声色に、何だからしくねぇなと思ってしまう。
そしたら何だか照れ臭くなって、うん、もどうも、も返すタイミングを失ってしまった。
そんな自分がまた恥ずかしかったから、品川はもう相方からの謝意は聞こえなかった事にして、ただ無言のまま、庄司から数歩の距離を保つ事にした。


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