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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

541BERSERKER of OLIVE ◆NtDx8/Q0Vg:2008/01/07(月) 22:32:30
しん、と静寂が落ちる。
庄司は手を前に突き出したまま、視線だけは自身の真下に向いていた。
男の目は、庄司の足下へ…

築地のマグロとなった井上は、庄司の元へと辿り着いていた。

だがしかし、井上の能力を知らない二人には何が起こったのか解らない。
庄司と男と。ゆっくりと、視線がかち合う。
ごくりと互いが生唾を飲み込む音さえ聞こえそうだ。

「お前、何かなった?」
「いや、別に…」
「俺も別に…」
「「……………」」

足下で固まったままの井上を見ながら、庄司はあーあと目を閉じた。

目覚めた瞬間、戦闘の気配を感じた。いや、気配を感じて、目を覚ました。
だから眠い目を擦って楽屋を後にしたし、眠い身体を叩き起こす為にコーヒーを飲んだ。
井上が来た時は正直、どうしようかと思った。
単純に巻き込みたくなかったし、何より戦うのなら、なるべく一人が良かった。
河本が自分達の楽屋にいると言えば井上はそっちへ行くかと思ったがそうも行かず、足を踏み出せば付いて来た。
だからはっきり、付いて来て欲しくないと言おうとした。
だけど言い切るより先にこの男が現れて。…で、今、これ。

庄司はズボンの右ポケットに手を入れ、モルダヴァイドを手の中でころころと転がした。
全く異常はない様に思う。男も何ともない、と言っていた。
井上さんの能力って何なんだろ。まさか戦意を削ぐとか、そういう系? と頭を捻りながら、庄司は男に向き直った。
ぐちゃぐちゃ考えたって仕方ない。起こった事はもう起こった事だし。

「お前さあ」
「…はい」
「何石使おうとしてんだよ。今誰もいないから良いけどさ、人が来るかも知れないじゃん。普通考えるでしょ」
「だから、です。お二人が、困ると思って…」

あー成程それ狙いかあ、と逆に納得してしまった。
まあそれでも石を渡す気はなかったし、それは井上も一緒だろう。
だからこそ今こうして、井上は直立不動のまま固まってる訳で。

少しイラついた風の庄司に、男は怯んでる様だった。
石に手を掛けようかどうか迷っている。ただ、庄司もまたポケットに手を入れているから、動けない。
庄司はそんな男に気付いているのかいないのか、まあ良いや、と歯を見せた。
それは、男が度々テレビで目にする笑顔そのままだった。

「取り敢えず、場所変えよ。ここ人来るし、派手に出来ないでしょ」










バタバタバタ、とスタッフよりも慌しく、二つの足音が廊下中に響き渡る。
品川と河本は、忙しなく左右に目と顔を動かしながらスタジオを駆け回っていた。

次長課長の楽屋に、井上の姿はなかった。
その後井上と仲の良い芸人達の楽屋を訪ねたが、何処にもいなかった。誰一人、井上の所在を知る者はなかった。
芸人達は井上を捜す手伝いを申し出たが、別に何かあったと決まった訳でもないし、大事にしたくないので断った。
通り掛かるスタッフ達に訊ねるも、皆さあ、と曖昧な答えを返すだけ。
仕方なく、手当たり次第のローラー作戦に出た。
トイレ、楽屋、階段、非常口。ありとあらゆる扉を開けて、ありとあらゆる通路を抜けて、井上の姿を捜す。
と、品川が突然足を止めた。

「ちょっ、河本さん河本さん!」
「何や、おったか!?」
「あれ、多分…井上さん? …っすよね?」

真っ直ぐに伸びた廊下を少し逸れると、僅かに広いスペースがある。
そのスペースのソファの上。品川の位置から、ピンと伸ばされた手と頭が、僅かに見えた。

「聡!」

河本が慌てて駆け寄る。
ソファの背もたれに顔を向ける形で横たわっている為、傍目には変なポーズで寝ている様に…見えなくもない。

「河本さん、井上さん動かないすけど…大丈夫なんすか?」
「良かった、大丈夫や。これ、聡の能力やから」
「どーゆー事っすか。井上さん、めちゃめちゃ冷たいですよ」
「マグロや。マグロんなって、相手の石の能力、凍らせるんや」


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