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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

512−19歳  ◆rUbBzpyaD6:2007/10/05(金) 03:46:36
街灯の下にその石を置いて見てみると、それはどうやら琥珀らしかった。
白いと思っていたがよく見るとほんのりと薄い黄色がかかっている。
珍しい色でありながら、それが琥珀だと分かったのは
まるで不気味な影をうつすように、石の中にサソリが入り込んでいたからだ。
琥珀は樹液が固まって出来た石、虫や葉が入りこむことはまれにあり、むしろその方が価値は高い。
それにしても
(気味悪いな)
というのが正直な感想だった。

あのあと町中を走り、男をまいた後、ヒデはひたすら歩いて靖史の家を目指していた。
靖史にこの石を渡せば、何かに気付いてくれる確立は高い。
「なんじゃこの猫ー」
と言ってまるで気付かれず追い出される可能性も高いといえば高いが。

どちらにしても、この姿のまま家に帰ってもしかたがないし、誰とも連絡は取れない
ここしか来る所はないのだ。
深くため息をつく。
リーリーと虫の音ばかりが聞こえる、誰もいない夜の公園の水のみ場で喉を潤す。
走り続けたため肉体は疲労困憊し、ぐったりとしていたが、ここまで来てぐだぐだしてもしかたがない。
家までもう一息だと立ち上がったその時
じゃり、
と誰かの足音がした。
じゃり、じゃり、と静かに近づいてくる足音。
街灯が少しずつ、その輪郭を浮き立たせる。
すらりとした高い背。それは先刻別れたばかりの。

───庄司。

どれくらい前からこちらに気付いていたのか、じっと張り付いたように凝視している。
驚いて見返していると、ゆっくりと口を開いた。
「・・・ここに来るまでのあいだずっと考えてたんですけど・・・」
膝を追って目線を近くする。
「・・・・・ひょっとして、ヒデさん?」

何か空気が歪むような感覚のあと
街灯が映し出す人の影が、二つになった。



「・・・助かったよ・・・」
と言うと
「いえこちらこそ」
といって庄司は笑った。
安堵と疲労で立ち上がる気力が無い。
今更になって気付いたが体中擦り傷と泥だらけでボロボロだった。
「もしただの猫ならうちで飼おうかと思いました
 俺猫アレルギーだけど」
そういって笑う庄司の肩を借りてなんとか立ち上がる。
手の中には例の琥珀。
これをあの二人の元に届けたら、とりあえず任務は終了にしよう。
でもその前に
「・・・携帯、貸してくれるか・・・?」
「はい?」
「心配してると思うから」

今は自分の手で、
電話できることがなにより嬉しい。


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