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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

498−19歳:2007/10/02(火) 21:07:13
冷静になってまじまじと見てみると
確かに兄に似ているし
確かに二人といないブサイクだ。と横に寝ている男を見て思った

時計を見ると朝の四時だった
昨日「とりあえずうちで引き取るわ」というこの男の一言の下
軽いノリで連れて来られて一晩。
「やっぱり警察に連絡した方がいいですよ」と言って別れた
あの二人の話を特に聞く気はないらしい。
とても眠れない自分の横で
うっとうしいほど大の字になって男は寝ている。

そっと布団を抜け出して、男の身体をまたいで部屋を出る。
玄関を音がしないようにそろそろと開けて外に出ると
風は冷たく、空はまだ濃い群青色をしていた。

特に当ても無く、歩き始めた。
並び立つマンション、綺麗に舗装された道路、雑草が覆い茂る空き地、小さな公園
新聞配達のバイクが横を通り過ぎる。
一瞬奇妙な目で見られたが、そういうものには慣れていた。



目が覚めたら毒虫になっていた男の話は読んだことがある
あれはなんだったか・・・・そうだ『変身』
でも目が覚めて周りがみんな変わっていたら
これは何と呼べばいいんだろう

知らない人が俺をジュニアと呼ぶ
世界中の日付が2007年になっている
モニターから流れるのは見たことも無いCM
ラジオから流れるのは聞いたことの無い音楽
異様に小さくなっている電話
さすがに鉄の猪だーと驚くことはないけれど
溢れるばかりの車の量と高層ビルが
自分の存在をわからなくさせる

周りが変わったんじゃない
自分がただ一人の異邦人なんだ
自分はやはり『変身』したんだ
そう感覚で理解するまで
それほど時間はかからなかった

神でも悪魔でもいいからこの現状から救ってはくれないかと思っていた
でもそう願っていたからこうなったんじゃなくて
何か持っていた恐ろしく大きなものを
自分は失ってしまったらしい
19年。
茫漠とした時間の量
その価値がイマイチ分からない
大変だと騒ぐのは周りばかりで
当事者であるはずの自分だけが
何がどう大変なのかがよくわからない

ただ

「にいちゃん」
後ろからふいに声を掛けられ振り返る
するとそこには先ほどの新聞配達のおじさん
「思いつめちゃいけねえよ・・・!」
江戸っ子なまりでそういうと無駄にアクセルを吹かせて横を通り過ぎていった。
しばらくそれを眺めていたが、くるりときびすを返してもと来た道を帰る。

玄関を開けると男は起きていた。
寝ぼけ眼でおお、と呻き。それから
「おかえり」
と言った。

・・・・ただ、自分に帰るところはあるらしい。

「思ったんやけどさぁ」
「あぁ?」
「毒虫はないよな」
「あ?」
「なんでよりにもよって毒虫やねんって思っとったけど
 やっぱあれはないわ
 あれよりはマシやと思うわ」
アホな顔をしたまま、男が「おぉ」と同意する
「お前なんもわかってへんやろ」
思わず笑った。
「わかってへんやろ靖史。」

そう言って屈託の無い笑顔で、少年は笑った。


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