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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

484 ◆fO.ptHBC8M:2007/09/07(金) 23:00:18
黒の幹部で書いてみたので投下。

**************

場所は都内。
若者の集まる街、渋谷。その一角にあるビルの地下へ小林は足を踏み入れた。
時間は既に午前3時を回ろうとしている。
地下に続く階段は進んでいく程に息苦しさを覚えるが果たして、実際に空調の関係で酸素が不足しているのを感じたからなのか、それとも地下に対するイメージからなのかは分からない。
しかし階段の先に現れた重厚な作りの扉を開いた瞬間、確かに小林は目の前の男に言い知れぬ空気を感じ取った。
「遅かったね『シナリオライター』」
男の名は設楽 統。
今や巨大な『黒』の中心人物、その人。
「この場所に来るのは…初めてですから」
「それは申し訳ない。まぁ、その辺に座りなよ」
シナリオライターと呼ばれた男…小林は近くにあった椅子に座ると踏み入れた地下室を見回した。
二つ三つ照明があるだけの薄暗い室内。少ない明かりのせいで広いのか狭いのか判別出来ないがバーカウンターとダーツボードが何台か見られる辺りダーツバーだったのだろうか。
内装は床、壁、テーブルや椅子に至るまで全て黒に統一されている。
まるでそれ以外の色を拒むかのような徹底ぶりは他の色を嫌悪しているのではなく、むしろ、恐怖を―「良い場所だろ?いつもの料亭も悪くはないけど」
余計な詮索をするなとばかりに設楽が問う。その表情は笑っているが視線は冷たい。
「えぇ、こういう場所も嫌いではないですよ」
「そりゃあ良かった」
小林の言葉に満足したのか設楽は大袈裟に喜ぶ仕草を見せると店内(この場合、店と呼んで良いかは分からないが)に置かれた中で一際目立つ、場違いを主張したかのような黒革の椅子に腰を下ろした。
横には唯一の白も使われているチェスボードが置かれたテーブル。
チェスは設楽が一人でやっているのか白と黒の騎士を形どられた駒が交戦していた。
しかし、ルールが分かる者なら首を傾げる戦いだろう。駒は明らかに黒が多く、失えば勝敗のつく白の『キング』の駒が既に基盤の外へ放り出されている。
一つ小さな溜息を吐くと設楽はキングに手を伸ばした。
それを指で転がし玩ぶと小林を見ずに口を開く。

「『彼』を仲間に引き込みたいんだ」

数秒、設楽の言葉に茫然としていた小林だったが意図を理解したのか驚愕の表情へと変わる。
「それは…失敗すればこちらの被害を、失う力の多くを、分かってのことですよね?」
「もちろん何も計画せずに行動するほど頭は悪くないつもりだよ」
「しかし…今はまだ確実な人員の確保を先行することに決めたばかりじゃないですか」
「そう、熱くなるなよ」
設楽のソーダライトが軽く光を帯びる。
「このチェスボードの意味が分かるだろ?『時期』は近付いている…ここで『彼』が手に入ればもう勝負はついたも同然だ」
必死に『説得』を拒否しようと小林が力強く首を左右に降る。
「確かに『時期』は近付いているかもしれない…でも、そんなことは…」
「無駄とでも?」
「……貴方は焦っているだけだ」
「……………」
設楽の顔が一瞬歪んだのを小林は見逃さなかった。
「結果を早急に求めすぎることのリスクが高いことも頭の良い貴方なら分かるでしょう?」
「……………」
数秒の沈黙が流れる。
設楽のこの命令に、しかも石を使い『説得』までしようとしたやり方に納得出来なかった。
そして、ここまでさせる焦燥の原因を小林は分かっていた。

「相方の…ことですね」

「……………」
また数秒の沈黙。
しかし、すぐにクスクスと笑い出したのは設楽だった。
そして「君には負けるよ」と視線を空に浮かせ呟くと、石の光も消えた。


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