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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

452名無しさん:2006/12/08(金) 03:07:19
















「………っ!?」
光は茶髪の男の手のひらから黒髪の男の背中に伝わり、波紋が広がっては収縮していくかのように
瞬時に彼の全身を走ると、元の茶髪の男の手のひらへと戻っていく。
周囲には多くの人が行き来していたけれど、一瞬の出来事だったからか、それともまだ日が出ていて
明るいために緑色の光が目立たなかったからか、特にこの現象について驚かれたりされる事はなかったけども。
誰よりもまず茶髪の男自身が驚いたようで、元々大粒の目を一層丸く見開いた。

もっとも、緑色の発光に関しては、実は普段から見慣れている物だったために彼としても驚く事ではない。
ただ、光の発生源である彼のブレスレットの石……持ち主の意思に応じて不思議な力を発揮する石が
彼の意図しないタイミングで勝手に光った事。
もう一つ、彼の手のひらに黒髪の男の身体を駆けめぐった緑色の光が戻ってきた直後に、
ピリッという痺れを指先に感じた事。

……何なんだ、一体。
そう茶髪の男が内心で呟くのと同時に、軽く痺れを感じた指先から鈍い痛みが襲い来て。
頭をどこかにぶつけでもしたかのような衝撃に思わず息が詰まり、男はその場に立ち止まった。

「くっ……。」
不思議な力を持つ石は、それぞれの力を発揮する事に何かしらの代償をもたらす物であるが、
彼の持つ石の場合は、触れて緑の光を走らせた相手に自分の出す指示…願いに従うよう促す事が出来る力に対して
その代償は、指示の実行の妨げになる相手の疲労や傷の痛みを指示の難易度に応じて引き受けてしまう事。
それを考えれば、光が発されて茶髪の男が痛みに襲われるのは、一連の正しい流れかも知れないけども。
これだけ露骨な痛みは、石を持つ者同士の戦いで傷ついた相手に、起きあがるよう促した時のそれに等しくて。
「一体…何やったんやろ。緊張が解けて誤作動してもーたンやろか。」
何とか痛みのピークを耐え抜き、男はぼそりと呟きを漏らす。
今はM-1という戦いの最中にあるけども、それは痛みとは無縁の戦いの筈で。
そして彼が相手に投げかけた言葉に指示にあたる言葉があったとしても、それは重い代償に値するほど
難しい内容ではなかった筈。

「……………。」
幾つか脳裏に浮かぶ疑問を投げかけたくとも、先を歩く黒髪の男の背中はいつの間にか人混みに紛れて
どこにも見つけられなくなっていて。
とはいえ完全に引ききらない痛みのせいでわざわざ捜そうという意欲も起こらず、茶髪の男ははぁ…とため息をついた。


後でそれとなく聞いてみればいいか。
結果、そんな結論に辿り着いてふらふらと再び歩き出す茶髪の男の手首では。
ブレスレットにあしらわれた石が、どこか悲鳴にも似た光の瞬きを繰り返していた。
それはまだ、11月の初めの事。


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