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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

442 ◆2dC8hbcvNA:2006/08/20(日) 19:06:56
 相手が敬語である訳は聞かない。設楽には説得するべき相手が残っている、構っている暇はない
のだ。これ以上ない位に集中し、すでに慣れてしまった暗い感覚を得た。目の前に相手はいない。
説得すべきは自分自身。
 やろうとしていることは血を洗うようなものだ、そうしなければシナリオ通りになってしまう。
先陣を切って行動することは自らの身を危険にさらすことになる、けれどシナリオを打破しなけれ
ばいけない。争いに巻き込まれたら日村も危険だ、かといって行動しなければ最悪の事態が待って
いる。目的を遂げたあとが見えない、目的を遂げた後に確かめればいい。仲の良い芸人を手にかけ
ることになるかもしれない、こちらが正しいことをしていると証明すればいい。自分自身は納得し
ているのか、自分自身が納得しなければならない。多少は強引な手を使っても、シナリオから逃れ
なければならない。
 意識が遠くなる。身体的にも精神的にもぼろぼろになった設楽の体は座っているにも関わらずふ
らつく。やがて日村の横に倒れ込んだ。遅れて襲ってきた吐き気のせいでなかなか意識を手放せな
かった。嫌に規則正しい、誰かの足音が近づいてくる。
「ごめん」
 聞き取れはしなかった。



 目を醒ませば白い天井がある。寝ているのはごつごつした床ではなく柔らかいベッド。鼻に付く
臭いから病院だと理解した。ふと辺りを見渡せば泣きそうな妻と。
 駆け寄ってきた娘が設楽に飛びつく。蹴られた辺りが酷く痛かったが我慢した。しかし衝撃のせ
いで持っていた何かを落としてしまう。白い床に、嵐の前の雨雲のような、大気汚染で汚れた地球
のような、青黒い石が転がった。拾い上げた娘は悲しそうに問う。
「石、こわれちゃったの?」
 設楽は口もとだけで微笑んで、娘の頭に手を置いた。

End.


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