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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

405最弱同盟 5/6:2006/04/30(日) 21:58:35
「山本さん! 後ろ!」
 田中が悲鳴のような裏返った声を上げた。後方に振り向いた山本の後ろ、つまり進行方向には、電柱がひっそりと聳え立っている。田中と鈴木は咄嗟に手を伸ばすが、山本と電柱の接近速度はそれを超えていた。
 田中は思わず目を覆う。石を巡る争いによって、数少ない友人の一人が犠牲になるかもしれないことが、田中には耐えられなかった。
 しかしそこに、閉じた瞼を透かすように、光が差し込んできた。薄目を開けて見ると、淡く黄色味がかった光が山本の腕を覆っている。その腕は電柱に激突する手前で、山本の体を支えていた。
「山本君」
「山本さん……」
 田中と鈴木は揃って安堵の声を上げた。
 山本は無重力空間でためていた“重力に逆らって立つ力”を腕力として放出し、激突の衝撃を吸収したのだった。
 鈴木は小さく息を吐くと、限界の迫っていた能力を解いた。体がストンと地面に落ち、慣れ親しんだ重力の感覚が戻ってくる。
「うわ、は、離せって!」
 山本の声にそちらを向くと、黒の若手が尚も諦めずに山本に掴み掛かっていた。今こそ自分の出番と察した田中は、ポケットから自らの石を取り出し握り締める。今度こそ失敗しないよう、いつもより余計に集中して。
「まあまあ、もう諦めようよ。仲間もみんなついてきてないみたいだしさ」
 田中の言葉に、若手の男は攻撃をやめて大人しくなった。山本に全力の一撃を止められたことで、既に心が折れ掛けていたのかもしれない。しかし力がちゃんと使えたという事実に、田中は深く安堵していた。


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