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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

394rosso:2006/03/27(月) 01:52:41
少し離れた暗い街の裏道で、その男はがくがくと震えていた。

身体に飛び出ていた突起や鱗は、徐々に消えてゆき、ゆっくりとごく普通の人間にもどってゆく。

完全に人間に戻ったのを確認すると。男は固く握り締められた手を開いた。

そこには赤い石の中に黒い輝きを持つ、『ブラックスター』と呼ばれる石があった。

「おい!なんだよ!あの化け物は!?」

男は手に持った石に話しかける。

石は輝きながら、テレパシーのような声を発する。

『・・・・だから言っただろう。芸人ってのは、誰しも腹の中に化け物を飼っているものさ

誰よりも認められたい、

誰よりも前に出たい、

誰よりも上に立ちたい、

誰よりも笑わせたい、

そういった芸人の中にある、欲望に凝り固まった化け物が、その芸人を動かすんだよ。

お前が石を発動させれば、その化け物の姿を見ることが出来る

お前が対峙した男は、特にそれが強いのさ

・・・だけど、ははっ確かにすげえ化け物だったな。あれくらい大きいのはめずらしいや』

その石は饒舌にそう応えた。

男は納得いかないというように石に問いかける。

「じゃあなんで、そういう芸人にお前は憑かないんだ?元々強い化け物に憑けば他のやつらの欲も回収しやすいだろう?なんで俺みたいな無名芸人に憑くんだ」

石はめんどくさそうに応えた。

『だって仕方がないだろう。

俺の力は持ち主の芸人の持つ欲に値する化け物に、一時的に変身させることと

相手の中にある化け物を目に見えるようにすること。

あと、元々ある欲を強めること。

この三つだ。

元々欲の強い芸人に憑いたら、たいていは速攻で自分の中の化け物に喰われるんだよな。

自分の中の化け物を自分じゃ止められなくなるのさ、

もうめんどくさいんだよ、持ち主がいなくなってまた探さなきゃならなくなるのは。

宿主は、長持ちしたほうがいいんだよ。

ああ、そうだ、お前に言ってなかったな、俺の前の持ち主の名前を知りたいか?それはな・・・』

「いや、いい」

と男は石の喋りを遮った。

「聞きたくない」

石は嗤うように答えた。

『芸人って言うのは因果なものだよな

欲がなくちゃ前に進めない

欲に喰われれば壊れてしまう

だけど、お前の中の欲は芸人にしちゃ格別薄いよな。

でもそんなものか?そのままでいいのか?

言っただろう?お前が化け物になって相手を倒せば、そいつの欲と力を貰えるぞ

あんなでかい化け物じゃ倒せなくても、手近なところから、そうだな、お前の相方とか・・・・』

「黙れ」

『欲しくないのか?少しずつ強くなればいつかは・・・』

「黙れ」

男は耳を塞いだ。

聞くな。聞いてしまえばおかしくなる。

そうだこいつは言うとうり、宿主に出来るだけ寄生して、大きくなるのが目的だ。少しでも長く、少しでも多く。

だから俺についた。意思の弱い、欲の弱い俺に。

少しずつ調教し、少しずつ汚し、やがては自分の思うままに動く、巨大な化け物にするために。

わかっている、すべてわかっている────のに。



耳を塞いだ手の指の間を、石から発せられる黒いドロドロが、水のように入っていく。

『欲しくはないのか?

栄光が

喝采が

賞賛が

金が

俺を利用すれば、全てが手に入るんだぞ・・・・俺の言うとおりにすれば・・・』



声を、拒むことが出来ない。

恐怖しながらも心のどこかで満たされてゆく優越感。

心の奥底に充満していく闇に向かって

俺は何度も叫び続けた、



誰か助けてくれ、誰か



と。



                              おしまい


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