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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

302そして僕らは完全となる。 DLEARTMI#:2005/08/18(木) 02:46:07
―――すみませんでした、トータルさん。
そう小さく呟いて、手中の石に力を込める。
それは突然、かぁっ、と熱くなったかと思うと、全身を劈くような痛みで体が重力に耐えられない。
辛うじて壁に手をつき、ずるり、と膝をつく。
嫌な汗が額にうっすら浮かび、すぐにポタポタと床にたれた。
こんな時は、負けてしまう。
――――あんまり痛いなら、その黒い欠片にダメージを注ぎ込めばいい。

そんな事したら、黒の組織に迷惑掛かるんじゃないですか?――――

――――それを飲み込めばいいんだよ。それはお前にも、組織にも都合がいい。

黒い石の欠片なんて飲み込んだら、どうなるんだろう。
少なくとも、本当の意味での『すべて』が支配されちゃうんじゃないだろうか。
痛みが引けない。二人分の傷はさすがに重たかったかな。胸がいっそう苦しくなる。
「君、何してるの?どうしたんだい?」
声の先を見上げると、年配らしい警察の人がこちらを眺めている。
思惑外の出来事に、痛みをぐっと堪えながら言葉を返す。
「上から来たんですけど……血、見たら…気持ち悪くなっちゃって………」
あぁ、という顔で背中をポンポンと叩く。大丈夫?という事だろうか。
「吉本の人か。………あいつら知ってるのか?」
年配らしいこの人が、親指で大村さんの方を指す。
「はい…。先輩ですよ」
もっと何かしらコメントしてみたいが、体中が痛みのピークを記録している。
この人がいなければ、黒い欠片に依存してしまっている頃だ。
「人間怖いな。
こんな事で人ってああなっちまうんだ。
覚えておいた方が良い。人なんて殺すもんじゃない
どれだけの人が悲しむか、なんて。考えたら分かる事なのにな」
「…………」
吉田の顔が頭を過ぎる。
未だ、殺す事はしていないが、もうほとんど殺人に手は掛けている。
そしてそれを止める事は、今の自分にはできない。
寂しそうな背中をただ、一番近くで眺める事だけ。
ここで、やっと痛みが引いてきた。
そうとなればこちらのものだ。もうこれ以上痛む事は無い。
「ありがとうございました、もう大丈夫です。すみませんでした」
頭を下げて、血の匂いから離れた。
玄関を通り抜けると、先程よりも増えた野次馬。救急車。
何を期待して、こんな光景を見てるんだろう。
野次馬に紛れ、壁に背を預けて救急車が出て行くのを見送る。
目を瞑り、腕を組んだ。 野次馬がぞろぞろと消えていく。
「…それはどういう事なんだ」
さっきの年配の警察さんが、どこかで怒鳴っていた。
「これが事故だって?…何抜かしてんだ、これは事件なんだぞ」
真剣な声。神経を集中させて、その声を聞き取る。
「上層部の命令?…なぜなんだ……」




「……見て見ぬふり、か」

ひどいなぁ。
そこまで手が回ってたんだ。
もともとの期待こそ無かったけれど
警察も関与しないとなると…。
寂しそうな吉田の背中が目に浮かぶ。
―――本当に誰も  助けてはくれない
う〜ん、と口を結び、俯いた。
太陽はとっくに傾いていた。


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