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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

299そして僕らは完全となる。 DLEARTMI#:2005/08/18(木) 02:33:07
黙ってその光景を眺めていた吉田は俯きながら、血濡れた手を下ろした。
顔こそ無表情であったが、頭の中では様々な考えが素早い回転を見せていた。
胸ポケットにしまわれていた吉田の石が、突如現れた大村の石に強い反応を示す。
激しい反応―――つまり、それは警告を意味する。
警告の意味を悟った吉田は静を保ったまま、スッと立ち上がった。
服についた血がポタポタと床に滴る。
大村は吉田を目で追わなかった。少なくとも、追うほどの余裕はなかった。
石の誘惑に負けたのだ、自分は。
吉田は無言で、石に依存した大村と、ぴくりとも動かない藤田を眺める。
それは、絶望を形容するにふさわしい光景だった。
彼らにあった希望はすべて絶望に変換され、未来さえも真っ黒な。
吉田はふぃと目を逸らした。これ以上、直視する意味はない。
騒がしくなってきた外界に目を細めた。そろそろ退散しなければいけない。
踵を返し、しかしぴたりと立ち止まる。

「大村さん、これだけは覚えておいてください」


血の中で、大村はゆっくりと顔を上げる。
吉田は背中に鋭い視線を感じ、微かに俯いた。



「殺せば、殺されますから」



静寂の中。

俺が何を言っているのか、意味はわからないだろう。
俺と何の関係があるんだ、と睨んでいるんだろう。

ゆっくりとした足取りが、外へ続く扉に向かう。
ガチャリ、と開いた扉に、吉田は独り言のように呟いた。

「いずれ分かります」

無表情の中に、ただの一つも正の感情はなかった。


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