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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

172</b><font color=#FF0000>(4t9xw7Nw)</font><b>:2005/03/28(月) 03:34:57
進行会議スレで話したはねる編番外編投下します。

Inner Shade



――――パチン

「王手」
とあるテレビ局の片隅で。
控え室の長机の上に折り畳み式の将棋盤を広げ向かい合っている二人――――鈴木と山本だ。
一部のコント以外では出番が極端に少ない山本と、ほとんどのコントでエキストラ同然の扱いになっている鈴木は、時折待ち時間にこうやって将棋などをして暇を潰す事がある。
もちろんモニターで自分や他のメンバーの演技をチェックしたりもするのだが、それでも時間が余るという事は多々あるのだ。
今日の収録も終わりに差し掛かり、一足先に全ての出番を撮り終えた2人は既にエンディングの衣装に着替えていた。

「・・・・・・・・・・・・参りました」
数十秒後、真剣な表情で考え込んでいた鈴木が溜息と共に両手を挙げて降参の意を示すと、山本は少し心配そうな顔をしながら駒を初期配置に戻し始めた。
「鈴木さん、今日は調子悪いですね。何かありました?」
先程の対局は、山本の圧勝だった。手も足も出ない、という表現がピッタリな程の一方的な展開。
いつもならばここまで酷い負け方をする事はほとんどないのだが、今日はどうにも上手く盤面に集中する事が出来なかったのだ。
どうしても、部屋から出ていくメンバーの後ろ姿や聞こえてくる話し声に意識が向いてしまう。
「いや・・・・・・別に何かあったわけじゃないんだけどさ」
口ではそう言うものの、理由は明白だった。
最近、はねるのトびらのメンバーが相次いで手に入れたもの――――芸人達の間に広まっている、強大な力を持った石だ。
他の十人より先に石を手に入れていたドランクドラゴンの二人は、石の力を巡る争いについてある程度の知識を持っている。
悪意を持って石を扱う芸人の事や、『黒』と『白』の争いの事。
そして、それを知っている二人は他のメンバーが石を手に入れた事で自分達の関係にヒビが入る事を恐れ、石の持つ力について知っているにも関わらずつい数日前までその事を言い出せずにいた。
本当の事を言ってしまってよかったのだろうか、その事が事態を悪い方向へ向かわせてしまうのではないか――――
一度考え始めれば思考の迷路に迷い込むのが分かり切っているので出来るだけ考えないようにしているのだが、いくら考えないようにしても不安が消える事はない。
収録を進めているうちに確かな変化に気付いてしまったから、尚更。

皆の様子が少し変わった事に、鈍感な部類に入る鈴木もようやく気付いていた。
のけ者にされたわけではないだろうが、相方がそれを教えてくれなかった事に腹が立つ。
事実を早めに理解していれば自分にだって何か出来る事があるはずなのに。
信用のおける相手でも全てをさらけ出せるとは限らないと、分かってはいるけれど。
じっと耐えるしかないのだろうか。何かが足りないような気がする。
てのひらからいつの間にか零れ落ちてしまったそれを見つけられない、不安。
るつぼで溶かした鉱物のように、様々な感情が入り混じり溶け合って心を波立たせる。

――――でも、それでも俺は――――

本音が伝われば、と思う。本当は口に出して言いたい、偽りのない思い。
その言葉を口に出さなかった事を鈴木が心の底から後悔するのは、もう少し後の事になるのだけれど。

(大体、何で塚っちゃん何も言ってくんなかったんだよ・・・・・・絶対俺より早く気付いてたはずじゃんか)
収録も終わりに差し掛かってから気付く自分の鈍感さにも腹が立つが、相方が自分に何も教えてくれなかった事の方がもっと嫌だ。
もちろん、他のメンバーが居る前でその事を言うわけにはいかないのだが。
(絶対後で文句言ってやる・・・・・・)
「・・・・・・鈴木さん? 大丈夫ですか?」
「えっ?」
どうやら、いつの間にか眉間に皺を寄せて黙り込んでいたらしい。
「・・・・・・ごめん、ちょっとボーっとしてた」
心配そうな山本の声で我に返った鈴木は、眼鏡を押し上げるついでにすっかり疲れた眉間を人差し指で押さえ、深く溜息をついた。


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