したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が900を超えています。1000を超えると投稿できなくなるよ。

【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

16819 </b><font color=#FF0000>(Ps/NPPJo)</font><b>:2005/03/24(木) 11:24:13



男はため息を吐いた。標的である小沢が出てこなければ、一定の方向へしか衝撃波を飛ばせない自分の能力も空回りするだけだ。
「小沢さーん、聞こえます?」
声を掛けると、ドラム缶の向こうから「聞こえるよ〜」という小沢のくぐもった声が返ってきた。
「僕だって体力のこととかありますし、小沢さんだって時間ないんでしょ?このまま長期戦じゃ困ります。
僕の力は、ただただ声のでかさだけが衝撃の大きさにかわるだけです。
そんな単調な能力、恐れる理由になりますか?」
しかし男による説得を、小沢は強い調子で否定する。
「なるよ!当たったら痛いじゃん」
「…そりゃそうだ」
小沢の言葉に納得させられると、男は小沢の隠れているドラム缶とはかなりの距離を置いて置かれている木箱の後ろに隠れるように腰を下ろした。
「こりゃ長期戦になるなぁ」
疲れるの嫌だなぁ、と先ほどと同じようにもう一度ため息を吐くと、諦めたように石を握り締めた。



男は長期戦に持ち込む気になったようだ。
男の気配が小沢から離れるのを確認すると、小沢は詰めていた息を吐き出した。
暑くもないのに額からひきりなしに流れる汗を服の袖で拭うと、小沢はドラム缶に寄りかかった。
なんとなく、井戸田の顔が浮かぶ。
訳の分からない内に石と力を手に入れ、本人の望まないうちに非日常に放り出された小沢にとって、仕事とはいえいつも傍にいる井戸田に会うことは自分がまだ日常に居ることを確認することが出来る手段の一つだった。
井戸田に怪我のことも石のことも何もかもを黙ってきたのもそれが理由の一つであるし、芸人の間で密かに広まりつつある石の噂も出来る範囲内で自分たちの日常の中から排除するように、耳に入れないようにしてきたのだ。

井戸田は今、自分を探しているかもしれないしスタッフに謝って回っているかもしれない。
しかし井戸田という日常は、あの控え室で自分を待っている。

「早く帰りたいよ…」


呟いた言葉は空気中に溶け、開け放たれている扉から吹くかすかな風に攫われていった。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板