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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】
157
:
ロシアン・シュー </b><font color=#FF0000>(dkDoE4AQ)</font><b>
:2005/03/20(日) 13:46:19
「じゃあ、俺は帰る。またルミネで会おう」
朝もやの中、カラスの鳴く居酒屋前の路地で。
目のまえの先輩は至極さっぱりとした顔で大村と藤田を見て、続ける。
「今日のこと、“あのひと”には内緒な」
その指示語が誰を指しているのかはすぐに知れたので、二人も問い返したり
はしない。
その代わり、藤田がすこし躊躇って切り出す。
「山本さん」
「何、あらたまった顔で」
「山本さんの石の能力は」
「知った人の幻覚を作り出すこと。その人のことを知ってれば知ってるほど、
リアルな幻覚が作れる」
大村が見た山崎の幻覚が奇妙なほど笑顔だったのは、山本のイメージの中の
存在だったからなのだろう。
「まぁ幻覚ゆうか…正確には“蜃気楼”みたいなもんやな。人によって見れた
り見られへんかったりするようにも出来るから、正式な蜃気楼とはちがうけ
ど」
「なんで蜃気楼でしょうね?…蜃気楼ったら砂漠?山本さんがラクダに似てる
から?」
「さぁ」
山本が気を悪くした様子も無いので、藤田は思い切る。
「あの、山本さん。…樅兄の幻覚、もう一回作ってくださいよ」
「え?」
「俺、最後に、チャイルドマシーンの揃い踏みが見てェっす」
もじもじすんじゃねぇ、と笑って背中を叩いて、藤田をツッコんでやろうか
と大村は思ったが、相方のデカイ体の向こうに見える山本が泣きそうに瞳をゆ
がめたので、何も言えなかった。
「…悪い、藤田。俺、今日もう打ち止め」
「…」
「1日に2人も幻覚作ったん初めてで、わりとへろへろ」
それは言い訳ではなく、真実なのだろう。石を使った人にしか分からない疲
労感は確かにある。しかもあれだけリアルに喋る幻覚を作ることが、何度も何
度も出来るとは考えにくい。
そっすか…とすっかりしょげかえった藤田の背中を、今度こそ大村がドスン
と重たく叩く。
「…藤田、気付け。おまえの石の出番じゃねぇの?」
大村の助け舟に、アフロの下の藤田の曇り顔が一気にパッと晴れ渡った。そ
して「どういうこと?」と山本が問い直すより早く、
「山本さん、ハンパねぇっ!」
早朝の空に、高らかに藤田の声が響いた。驚く山本だが、すぐに藤田のポケ
ットの中が薄い碧色に光るのが服の上からも見えたので、その意を察する。
「藤田、おまえの能力って」
その問いには、藤田ではなく大村が応える。
「余力無い石を、ハンパねぇ状態に回復させる。ま、ゆったらタダで満タンに
してくれるガソリンスタンドみてぇなもんです」
「ちょ、それヒドくねぇ?」
「ホントのことだろう」「だとしてもヒデェ」などと二人がちょっとした小
競り合いを始める。それを見ていた山本の隣の空気が、ちょうど人の大きさぐ
らいに、きゅぅっと密度を高めた。色はないが、透明なレンズを置いたかのよ
うな。
…藤田の石・翡翠(ジェイド)の能力のおかげで、幻覚を作り出すことが出
来そうだ。しかし、本格的な口喧嘩になり始めた藤田と大村は、その瞬間を見
ていない。
「フザケんなよおめー!」
「やろうってのかよ。おまえのことなんざ金輪際もう知らねェ。ダチでもなき
ゃ相方でもねぇ」
「上等だ!このすっとこどっこい!」
つい数時間前に「俺は相方を信じてる」ようなことを言っていた二人とは思
えない罵詈雑言が、薄水色の朝空の下を飛び交う。苦笑していた山本が、何か
念じるかのように、一瞬目をきつく瞑った。ペンダント式なのだろうか。石が
あるらしい山本の胸元が、淡い光を放つ。
隣の“密な空気”が、中央からゆっくりと色を生していく。ゆらりゆらりと
揺らいで危うかったそれは、ある一瞬からしっかりと質感を持って目に映る。
石が何かまでは明かさないが、今まさに山本は蜃気楼で人を一人出現させん
としている。
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