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【添削】小説練習スレッド【キボンヌ】

653本71現637:2008/08/17(日) 14:10:14
土田の言葉を聞いて、柴田の顔色が変わる。
「馬鹿な…」
「ああ、やっぱり気づいてなかったんだ、」土田は尚も続ける。
「多分さ、柴田は根が良い奴すぎるんだよ。普段抱かない感情を無理やり、それも急激に増幅させられたせいで、予想以上に暴走してる。
真っ直ぐすぎる性格ってのも相まって、あんたの影響もろに受けすぎちゃってんだと思うけど」
柴田は悔しさに身を震わせながら下を向いた。その邪悪に満ちた眼は、本来の柴田には似つかわしくなく、無理やりはめ込まれた宝石のようだった。
「…このままじゃ、もたないんじゃない?あんたも、持ち主も」
追い討ちをかけるような一言に、柴田は弾かれたように顔を上げた。
「ふざけるな!6年前の復讐を果たすまで、消えてたまるか!」

土田、設楽、小林の三人に緊張が走った。楽屋には奇妙な沈黙が、流れる。

「――『ミサの日』のことか?」
ようやく口を開いたのは、土田だった。
「はっ、愚問だな、」怒りの色の混じった声で、柴田。
「『俺』はお前らなんかよりずっと鮮明に覚えてるんだぜ。まあ、なのに何でコイツが何にも覚えてないのか甚だ疑問だがな」
コイツ、とはファイアオパールの持ち主である柴田自身を指す言葉だった。


6年前に起こった事件。白と黒とが一旦“ミサ(解散)”を余儀なくされた、あの事件。
ほとんどの芸人はその日を境に石に関する記憶を全て失っているのだが、完全には忘れていない者たちも一部おり、はたして黒の幹部3人はその中に含まれる。
彼ら3人の記憶は他の者たちに比べると色濃いものだったが、しかしそれでも断片的で漠然としたものでしかなかった。

(やっぱり、無機物の方が記憶を刻むのには適しているんだろうか)
詩人じみた考えを浮かべ、しかし小林はすぐにそれを脳の片隅に追いやった。今思考すべきことではない、と。


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