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【添削】小説練習スレッド【キボンヌ】

597581:2007/09/06(木) 01:21:12
その日を境に、渡部は石の能力を小出しに使用し、実験するようになった。
そうして分かったのが、自分は目を閉じて念じることで他人と「同調」できるらしいこと。
対象人物一人の見るもの、聞くもの、味わうものなどを共有できるらしいこと。
つまり、相手の五感を探る事ができる、ということ。しかも、本人に気付かれずに、だ。
あと、どうやらそれは自分の目の前にいない人物でも可能だということ。
また、同調している最中は自分の体が全くの無防備状態になってしまうという、こと。

「…なあって!」
不意の大声に驚き、「同調」を解く。
目を開けると、児嶋がバックミラー越しに自分を睨んでいた。
今は、児嶋が運転する車で仕事に向かう最中だった。
一人後部座席に揺られる退屈を紛らわすべく、さっきまで山崎に「同調」していたのだ。
居酒屋らしきところで仲間と飲んでいた後輩は、相変わらず大声で喋り散らしていた。
店の熱気と喧騒から帰ってきた今も、耳に違和感。相方のせいではない。
「寝るなよ、人が話してる時に」苛立った様子で、児嶋。
「寝かせろよ、退屈なんだから」
「退屈ってあるかい、相方が喋ってんだよ!」
「わりいわりい」魂を込めずに謝ると、渡部は窓から遠くを眺めた。
何でさっさと焼き鳥食わねえんだよ、と山崎のおしゃべりな性格を、恨んだ。


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