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【添削】小説練習スレッド【キボンヌ】

558ヴィクラモールヴァシーヤ ◆XNziia/3ao:2007/07/28(土) 05:20:52
【序曲】

右手を掲げ、ふと手首にぶら下がっている石を見つめる。
ライラック色の美しい石には陽の光が差し込み、高佐は思わず目を細めた。
美しくも、どこかに魔力を感じる、そんな石。
『常時身に着けてなくてはいけない』そんな気持ちにさせる力が、この石にはある。
最初は気味が悪かったし、何度も捨てた。だが、気がついたら鞄に入っていたりと、自分のもとへ戻ってくるのだ。
それが彼にはこれから起こる不幸の予兆のような気がしてならなかったのだが、
折角こんな綺麗な石がタダで手に入ったのだからと思い直し、業者に頼んでブレスレットにしてもらったのだ。
その業者によるとこの石はクリーダイトと言い、ライラック色はその中でも人気が高いものなのだそうだ。
高佐はそれを聞いて尚更手放す気はなくなった。
「(…そういえば、オジェは?)」
尾関は、石を持っていないのだろうか?そんな疑問が高佐の頭に浮かぶ。
気がついたら高佐は枕元に置いてあった携帯電話を開いていた。

ルルルルル ルルルルル
ガチャ
『んーどしたー?』
「あのさ、オジェ。ちょっと聞きたいことあるんだけど。」
『ネタのこと?』
「いや、違う。最近、誰かから石貰ったりしなかった?」
『石ぃ?何でまたそんなこと』
「いいから!」
『あぁ、貰ったよ。石…つーかブレスレット。ファンの人から貰ったんだけどさー、超綺麗なの。』
「…そう、そうか。うん。わかった。有り難う。明日、ネタ合わせ遅れないでね。」
『こっちのセリフだっつの。じゃあな〜』
プツッ

―−偶、然?いやそれにしちゃ出来すぎてないか?
誰かが仕組んだ?いや、そんなの、無理だろ。そこまでして単なる石を持たせる必要性って?
「…単なる、石じゃなかったら?」
ボソリと呟く。石になんか不思議な力でも、あるっていうのか。
「(そういえば)」
そんな話、聞いたことある気がする。
不思議な石の力を使って先輩の芸人さん達が、戦っているとかいないとか。
御伽噺や嘘話の類かと思い聞き流していたが…。
「(いよいよ、信じなきゃいけない感じかな)」


薄暗い部屋で、数人の男が話していた。
一人は知的な雰囲気を漂わせ、ノートにペンを奔らせている。
「調子はどう?『シナリオライター』。」
「…」
「あぁ、そうだ、力を使っている間は話しかけても夢中だったんだっけ。」
クスクスといやらしい笑い声をあげる男。
それを無愛想な顔で見つめるガタイの良い男性。
先程までペンを奔らせていた男は、ピタリと書くのをやめ、ペンを置いた。
「おっ、終わった?」
「えぇ。まぁ、とりあえず、は。」
「どうよ?出来のほうは。」
そう問われ、男はふっと笑う。
ノートをパタンと閉じ、
「なかなかの出来じゃないでしょうかね。」
それを聞いて安心したように男は良かったと呟く。
「…ちゃんと彼らを引き込めるんだろうね、『こちら側』に。」

「えぇ。…設楽さん、土田さん。」


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