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【添削】小説練習スレッド【キボンヌ】

425oct ◆ksdkDoE4AQ:2006/03/14(火) 22:20:31
「…何の、御用でしょう」
 三好は、警戒心を隠しもせずに尋ねる。
「うん、まぁ小手調べっていうかさ」
「は?」
 あくまでも明日の天気でもするかのような気楽さで吉野が応じる。身にまとったジャージの
影、手首の辺りでキラリと何かが光ったことに三好も田中も気付いてはいない。
「オキシジェンって、石持ってるんでしょ?」
「…誰に聞いたんですか?」
「誰だっていいじゃん」
「や、よくないですし」

 ドアの影から一歩も動こうとしないオキシジェンの二人に、今仁と吉野は一歩ずつ近寄って
いく。二組の間にピシリと緊張が走る。

 先手を打ったのはオキシジェンだった。
 彼らは若い。特に、舞台上では三好がプロレス技を繰り出しては田中を振り回す、アクロバ
ティックなコントを見せている。つまり身体能力には自信があるのだ。…それは裏を返せば力
に頼り過ぎているということにもなる。
 お互い石の能力が分からないこの状態ならば、できるだけ自分の能力を隠しておくことが肝
要だと吉野は思っていたし、今仁にもそれは伝えてある。
 猛然と吉野の方へと走り寄ってきた三好が、目前でタァン!と屋上の床を蹴って飛び上がっ
た。
 つられて吉野の視線も上がるが、数瞬後には飛び上がった三好の足が自分の身体に絡んでく
るのだろうとほとんど本能的に察知した。そういうプロレス技があることは、オキシジェンの
コントを見ていて知っている。確か…三好が田中の首を両足で挟むようにしてそこを軸にぐる
りと回り、遠心力で田中を床に引き倒すのだ。

 三好の足の動きを見ながら、吉野はその痩身をかわす。

 …はずだった。

 次の瞬間、何が起こったのか咄嗟に吉野には分からなかった。「視界」が変わった。まるで
スタジオのカメラを、スイッチして切り替えたように。
 三好を正面から捉えていたはずが、一瞬後には飛び上がる三好を後ろから見ており、そのま
た次の瞬間には元の視点…いや、そこから三好の足技によって地面に引き倒された視界となっ
たのだ。

「吉野!」
 今仁の声が聞こえる。夜空を見上げたまま、「何があったんだろう?」と吉野は考える。背
中が痛い。三好はヒットアンドアウェイとばかりにすぐにまた離れていったらしい。
「吉野、おい、大丈夫か」
「…まぁなんとか」
「くっそー、俺ならかわしてやんのによう」
 プロレス好きの今仁が少しわくわくしているらしいので、冷めた目線を投げかけるに留めて
おいて。
 吉野は上半身を起こしながら考え込む。


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