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【添削】小説練習スレッド【キボンヌ】

406 ◆9BU3P9Yzo.:2006/03/09(木) 16:44:24
「篠宮、新幹線何時やったっけ」
「あー…よう覚えとらんわ」
「お前…」
苦笑する高松をよそに、同じように大阪に向かう新幹線のホームでさきほどまで見た顔を発見する。プラスマイナスの二人が、やはり同じように地元行きの新幹線を待っている。とくに声もかけずにいたのだが、それはあっさりと破られた。
「おー、めずらしいやんか」
岩橋がこちらに気づき手招きしながら近づいてきた。それにつられるように兼光。
「あーお疲れ」
相方が軽く笑いながら手を招く。
近づく二人から、鈍い共鳴を感じ、相方越しに二人を見る。
楽屋のように楽しげに会話を弾ませる三人をよそに、火傷するんじゃないかと思うくらいに、フィロモーブライトが熱を持ち始めた。
奪え。
黒い声が、脳に響くのを振り切り高松の腕を取る。
「新幹線、来とるで」
「お?おお、じゃ、またな!」
プラスマイナスの二人に手を振り、その場を離れる。奪うのは簡単だ、奪うのは。
でも。
「ちょ、どないしてん?一言もしゃべらんと…」
「なんもない」
相方に見られたら終わりだろう。
相方にだけは見抜かれてはいけない。
一番に信じさせて、何もわからないまま事の終わりに立ち合わせて、それで。
俺は正しかったと、証明してもらわなければ。


「あ、そういやあの二人の石、どんなんやろ」


何気ないその言葉に背中から引き裂かれたように息が詰まる。
そう、こんな何気ない言葉でさえ今の俺には毒だ。
「石」
「うん、今日なちょっと見せてもらってん。仲間やったら、協力せなあかんやん?」
「…仲間?」
顔を上げずにただ淡々とオウムのように繰り返しながら、ぐらぐらと脳が煮え、脳内に直接あたる洞窟のような反響音が、吐き気を覚えさせる。
───奪え
──全て
─壊せ!!!
目を見開き息を吸う。
瞬間ベルのなる新幹線に高松を押し込み、発車したのを見送りホームに膝をついた
警鐘を打ち鳴らし、それに呼応するように石は黄緑の光を増し、胸の詰まるような苦しさに肩で息をしながら、ゆっくりと顔を上げる。一度、二度。瞬きと深呼吸を繰り返すと、ゆっくり立ち上がり、先ほど二人がいたであろう場所を見つめる。

息を潜め、目を閉じ、微かに、でもはっきりと感じる石の共鳴に、無意識に口角はあがる。
黒も白もない。
正しいのは俺だ。
それ以外の石など何も、いらない。


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