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【添削】小説練習スレッド【キボンヌ】

371 ◆9BU3P9Yzo.:2006/02/20(月) 17:18:46
返事を聞くか聞かないか、その瞬間走り出す吉田を目で捉えると佐田は本能的に攻撃をかわす。吉田が振り上げた刃が髪をかすり、はらりとリーゼントが崩れた。
「あっぶね…」
「ちゃんとよけないと、総長の名が汚れますよ」
挑発交じりの言葉に小さく舌打ちすると体勢を立て直し間合いを取るように後ろへ飛んだ。乾いた土を踏みつけながら、呼吸を整え相手を見据える。相手の武器はあの刀だろう。とすると自分の石の力を使えたとして、それを回避できるか…。頭の中で、今までの経験と照らし合わせながら行動を予測する。喧嘩なれとはこういう事だ、と自負しながら、じりじりと相手の隙を伺う。しかし吉田は何をするでもなく、ふいに血を体内へと戻した。
今だ。
そう思い相手の懐に飛び込んだその瞬間。
「甘いんですよ」
言葉が聞こえ眼を見開くと、背中に鈍い痛みが走る。
「…ぁ!」
鞭のようなものを手中に収めながら、吉田はおかしそうに笑った。攻撃を受けた佐田は背中に走る焼けたような引き裂かれたような痛みに、自分のうけた傷が酷いものであると察した。その場に崩れ膝をつき、ぜぇぜぇと息を吐く。
「もう、やめましょ。負けるのは眼に見えてるじゃないですか」
動けない相手を確認すると、草陰から阿部が姿を見せた。
「石、ください。持ってても苦しいでしょ」
「あほか…そんなん、聞けんわ!」
無防備に近づく阿部に勝機を見出し、シベライトを握り込み阿部を見つめにやりと笑う。
「あ、ばか!」
「ちょっときてー」
ちちち、とネコでも呼ぶように手招きすると、重力に逆らうように阿部の体が浮いた。
「わ!」
油断した体は簡単に浮き上がり、佐田の下へ引きずられる。それをヘッドロックで押さえ込み、佐田は吉田を睨みつけた。
「おら、相方がどうなってもええんか!」
阿部の左腕を掴み、逆側へ引く。怒りのあまり手加減が出来ないのか、それだけで阿部は小さく悲鳴をあげた。
「ちょ、それ、どっちが悪役だよ!」
「先にやったんはお前じゃボケ!」
啖呵を切るも、佐田の背からじわじわと流れ出す血が、意識を朦朧とさせる。ここに大溝がいなくてよかった、と、今更ながら心配し、苦しげに息を吐く。
「はよ選べ、このまま阿部の腕を折るんは簡単じゃ」
「くそ…!」
相手に隙を見せないよう、佐田はできるだけ悪づいた。少しの沈黙のあと、吉田は腕を組みながら鞭をしまい、ため息をつく。
「離してください」
「吉田!」
「離して…攻撃しようもんなら…」
「わかってます、今日は引きますよ」
はらはらと苦しそうに顔をあげる阿部に対し、吉田は淡々と答える。武器がないこと、相手が本当に戦意を失ったことを確認すると、乱暴に阿部を離し、吉田の方へ投げ返した。
「石は渡さんぞ」
「次に狙われても…そう言えればいいですね」
確認するように睨み付ける佐田に対し、吉田は小さく笑いながら阿部の手を引いた。阿部が立ち上がるのを確認すると、唐突に襲うめまいに膝を落とす。
「吉田!」
慌てて支える阿部を見ながら、大きなため息をつき佐田は背を向けた。
じりじりと痛む傷。自身の持つ石が静かなのに対し、浄化もしていない黒い石たちが、二人の持つ石に反応して共鳴を繰り返す。その怨念がましい、まるで細い悲鳴のような音に耳を貸すことなく、ゆっくりとその場を離れた。


これを狙いやってくる相手はまだまだいるだろう。
そしてそれらに対抗するのに自分ひとりでは厳しいことぐらい、佐田自身が気づいていた。
まずは情報を集めないと。
倒れそうになる体を引きずりながら、進むべき道を見出した。
中空に輝く月が、その影を濃く映し出す――――。


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